続き物
勘違いもほどほどに
※時間軸は安定のバラバラ




−もぞもぞ…ガバッ


「ぐぉ〜、ん〜エレイン〜www」

「ちょ、バン様っやめ、ひょわ!」



−ドガッ、バターン!!



[何をしている?]

「んん〜?……ん?wwお、まて、ゴウセル!誤解だ!誤解だからハーリットは仕舞え!!♪」






―遡ること30分前


皆様おはようございます。

今日は良い天気だから洗濯物が良く乾きそうだ。
今私は毎朝恒例の食事運び&目覚ましという役割を果たしにメリオダス様の部屋に向かっている。

本日の朝食のメニューは朝っぱらから肉肉肉そして野菜やパン(たまにお酒)で運んでいる私の方が胃もたれしそうだ。
因みにバン様もディアンヌ様も大体同じ内容で、キング様は果物をメインに召し上がる。
他の方にはバランスの良いメニューをお出しする。



――コンコン、ガチャ


「おはようございます。メリオダス様、朝食をお持ちしました」

「Zzz…zzz…」



やはり寝ている…またアレをやらなければならないのか。
七つの大罪の使用人として就いてからほぼ毎朝こんな調子なので、私はてっきりメリオダス様は朝が弱いのだと思っていた。
しかし、この間キング様にこのことをお話したところ、そんなことはないと仰っていた。
バン様はアルコールに弱いらしくすぐ酔ってしまうが、メリオダス様は弱くないので朝寝起きは良いらしい。
それを聞いてまさか実は起きているんじゃないかと思ったが、そうなると意図的にセクハラされていることになり、私からすれば時間も取られて良い迷惑だ。

だが主人に寝たふりしないでください、なんて言えるわけもなく、結局私には拒否権なんて無いのだ。
狸寝入りだと気付いてしまうと、一気に起こす気が失せてしまったが、これは仕事なんだと自分を奮い立たせた。


「メリオダス様、朝です。起きてください」

とりあえずベッドから一歩離れて布団越しにメリオダス様の肩を揺する。

「ん〜…zzz…」

少し身動ぎしたが、落ち着くとまた寝息が聞こえてきた。
これでは埒が明かない。いつもベッドのすぐそばまで行って強く揺するとセクハラをされるのだが、今回ばかりはやりたくない。
しかしそれ以外の方法で起きてくれた事がないので、やるしかなかった。

「メリオダス様、いい加減起きてくだ…!?」

むにむに

「ちょ、止めてください!」

「ん?お!おはようユウキ!」

「…おはようございます」


人の胸を触っておきながら平然と挨拶をするとは…許せん。
でも仮にも主人に対して手をあげるわけにはいかない(あげても実力的に効かない)し、ここは怒りをぐっと飲み込んだ。

「メリオダス様、朝食食べておいてくださいね!」

「おぉ!ありがとうな!」


――バタン!



怒りと羞恥で顔を赤くしながら逃げるように部屋を出た。
少々乱暴に扉を閉めてしまったが、後悔はしていない。


ガラガラと台を押しながらバン様の部屋に向かっていると、前方から本を抱えながら独り言を連発しているゴウセル様がやって来た。
今までは私が部屋に伺うまで待ってくださっていたのだが、何かあったのだろうか(独り言はいつもの事なので気にしない)


ガチャガシャ(ぶつぶつ)ガチャガチャ(ぶつぶつ)ガシャガシャ(ぶつぶつ)ガチャ(ぶつぶつ)ピタッ

私の前に来たゴウセル様は歩みと独り言をピタリと止めた。

「おはようございます、ゴウセル様」

[おはようユウキ]

「お早いんですね」

[散歩の気分だったので歩いていた。朝食までには戻るからいつも通り頼む]

「はい、かしこまりました」

[これから誰の部屋へ行くんだ?]

私が押す台を見てゴウセル様が聞いてきた。


「バン様のお部屋です」


それを聞くと、ゴウセル様は俺も行く、と私の隣に立った。
私から断る権利は無いし、どうせ彼の中では決まっているので、そうですかとだけ返しておいた。



――コンコン、ガチャ


「バン様、朝食をお持ちしました」


ゴウセル様は扉向こうにいる。
てっきりバン様に何か用があったのかと思ったが、いざ部屋の前に来ると俺はここで待つと言って見送られてしまった。良くわからない。


「ぐぅー、ぐぉ〜…ぐがが…Zzz…」

「起きてください」

メリオダス様の時同様、肩を揺すってみるが殆ど変化なしだった。
とにかくバン様が寝言を言い始める前に早く彼を起こさなくてはならない。
寝言を言っている時は夢を見ているようで、そのタイミングで起こすと誰かと私を勘違いして抱き着いて来ることがたびたびあった。
今部屋の前にはゴウセル様もいるし、間抜けな声は出したくないし、聞かれたくないのが本音だ。
…早く起こそう。


「バン様、朝です!起きてください!!」


−もぞもぞ…ガバッ


「ぐぉ〜、ん〜エレイン〜www」

「ちょ、バン様っやめ、ひょわ!」



−ドガッ、バターン!!



[何をしている?]

「んん〜?……ん?wwお、まて、ゴウセル!誤解だ!誤解だからハーリットは仕舞え!!♪」


こうして冒頭に戻る。
あえて説明するまでもないが、強く揺すり起こそうとしたら突然バン様が抱き着いてきた。
しかも、抱き着くだけではなく膝下まである使用人服のスカートをご丁寧にも捲り上げてきたので、予想外の行動に思わず変な悲鳴のような声を上げてしまった。恥ずかしい…
そしてスカートを抑えるのと腰が抜けてしまったのとで私は座り込んでしまった。
そこへ外にいたゴウセル様が扉を蹴破って乗り込んできたのだ。彼は国王様から賜った神器"双弓ハーリット"を既に構えた状態だった。
一体どこに仕舞っていたのだろう。

構えた弓の先にいるのは勿論バン様で、最初は寝惚けていたが、徐々に覚醒し状況に気が付いたようだ。
しきりにゴウセル様に神器を仕舞うよう説得している。


[答えろ、バン。ユウキに何をしていた]

「寝惚けて抱き着いただけだ!!それ以上何もしてねえ!!」

きっとバン様がここまで必死になるのは、恐らくゴウセル様の魔力"侵入"によってあられもない過去を暴き出されるのが嫌なのだろう。
いくら体が不死身のバン様も精神攻撃には敵わないようだ。
流石に可哀想だ。実際スカートは未遂だったわけだし、これ以上問い詰めても仕方ないように思う。
ゴウセル様が聞いてくれるかは分からないが、一応口添えしておこう。

「ゴウセル様、バン様は寝惚けていただけです。別の方の名前を呼んでいましたし」

[それは本当か?バンを庇っているんじゃないのか?]

「本当です。今はとにかく武器をお収めください」

私にはまだ仕事がありますし、このまま騒ぎになれば後片付けが大変になります。

[…分かった。被害が出なければ良いんだな?バン、あとでまた来る]

「お、おぉ(汗)」


――ガチャンガチャガシャ


「ありがとなユウキ♪助かったぜ」

「それは良かったです。では私は仕事に戻ります。扉は後で職人の方を呼んで参ります」

「おー、りょ〜かいww」



そのあと数日ゴウセル様もバン様も見掛けることはなかった。
他の使用人や七つの大罪に聞いても知らないと言われた。
ただ、魔力は感じられるのでこの付近にはいるだろうとは言っていた。
居なくなった切欠は分かりきっているので今更疑問には思わないが、なぜゴウセル様はあんなに怒っていたのだろう。
彼の口調は感情的な抑揚が欠けていて、普段何を思っているか全く読み取れないのに、その時はとても怒っているような感じがした。



とりあえずお二人を見掛けたら紅茶をお出ししようかな。





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