続き物
buprenorphine2
※シリアス、裏表現有









暫く洞窟で身を縮めていると、草を踏み掻き分ける音が聞こえてきた。
そのうちそれは洞窟に入ってきて砂利を踏む音に変わった。
私がゆっくりとそちらを向くと、逆光で良く見えないが多分あの男だ。
こちらに近づくにつれ姿が鮮明になるが、顔は分からないままだった。


[もう動けるようだな]

「お陰様で。一応礼を言っておくわ。ありがとう」

[お前を助けたのは善意ではない]

「分かってる。私も好きで助けてもらったんじゃない。本題に入りましょう」


もし(一部だが)記憶を見た通りの人物だとしたら、彼はあの指名手配中の大犯罪者、七つの大罪のゴウセルということになる。
今王国は全力を挙げて七つの大罪を探しているはずだ。
見つかったら面倒なことになるのは必至。
きっと私から聞くだけ聞き出したら口封じするに違いない。
勝手に助けて勝手に殺すなんて身勝手な話だが、所詮弱いものは逆らえない。
つい先日まで死がすぐ近くにあったせいか、あまりそれに恐怖を抱かなくなっていた。


[では単刀直入に聞こう。お前は何者だ?]

「私の記憶を見たのでしょう?なら分かっているはずよ。小さな村に生まれた悪魔の目を持った赤ん坊、それが私だった」

[悪魔の目、というのはその眼のことか]

「えぇ。どんなチカラがあるのかは見たんだから大体分かっているでしょう?」

[どうやって感知されずに使うことが出来た?お前からは魔力の類は一切感じなかった]

「魔力?知らないわ。生まれつき使えていたんだもの」

[では何故俺の魔力を阻むことが出来た?]

「さぁ。人の記憶にズカズカ入って来られて不快だったからそれで弾いたんじゃない?」


私がそう言うと急に顎に手を当てて黙り込んだ。
暇なのでこの七つの大罪ゴウセルと思わしき男を観察してみる。
体型は男にしては細身で身長は普通。
細身のせいか、少し小さく見えるかもしれない。
髪型は癖っ毛のようなボサボサの髪で長さは肩よりも長い。
色は暗がりの洞窟のせいかよく分からないが、濃い色をしていると思う。
顔は眼鏡が反射しているが、やはり年齢は若そうだ。
考えが纏まったらしいゴウセル(と思わしき男)はこちらを見た。


[ただの人間に俺の魔力を防げるとは到底思えないが、ここは信じる他無いようだ]

「そう。じゃあ話は終わったわね。私は失礼するわ」

[待て。どこに行くつもりだ?お前を逃がすつもりはない]

「じゃあどうしようって言うの?まさか助けておいて殺すつもり?」

[俺の目の届くところに居てもらう]


私が寝ていた布の傍に置かれていた荷物を持って立ち上がろうとしたら案の定止められた。
きっとこの後のセリフは死んでもらうだろう。
そう思っていたらまさかの予想外の言葉に耳を疑った。
聞き間違い?自分の正体を知っている奴を生かしておくつもり?


「どういうこと?殺すんじゃないの?」

[その能力は興味深い。まだ生かしておく価値はある]

「私が貴方のことを喋ったら?」

[それはないな。お前が喋って俺がいなくなればお前は生きられない]

「何を言ってるの?そんなはずないでしょ」

[これからそうしていく]


意味が分からない。正気?
それとも本当にそんな自信があるのか。
でもこの男のことを喋ったって何の得にもならないことは私にだって分かる。
聖騎士がここにやって来ればまず戦いは避けられない。
そうなれば逃げる体力もない私は巻き込まれてすぐに死ぬ。
そう言えば良いはずだ。
何故わざわざ自分がいないと生きていけないなんて言ったのか理解出来ない。


「それで?私にどうしろと言うのよ」

[これからこの森の先にあるオーダンという村に住んでもらう。俺は今その村の村長の家の召使いで名前はアーマンドとして暮らしている。間違えるなよ]

「ちょ、ちょっと!!そんなの知らないわ!嫌よ!!」

[お前の意見は聞いていない。もう決めた事だ]


なんだそれ。横暴にも程がある。
しかも簡単に村に住まわせるなんて言うけど、一体どうするつもりなんだ。
さっさと殺されて終わると思っていたのにがっかりだった。
決して私は死にたがりではないが今まで男達に玩具のように扱われて、ここに来て更に割り増しでその扱いを受けている。
嫌にもなるだろう。


[その格好では不味い。まずは見た目をどうにかしろ]

「…なら川に連れてって」

[分かった]

「っ!?自分で歩ける!降ろして!」

[黙って大人しくしていろ]


ただ案内すれば良いものをわざわざ抱き上げられるとは思わなかった。
さっきからチカラを使って視ても感情の変化は殆どないし、心の声はそのまま声に出ている。
こんなにチカラが通用しない相手は初めてだ。
見た目に似合わずかなり力があったので、私の抵抗は意味を成さなかった。
もともと衰弱していたからかも知れないが。

川は洞窟から結構離れた所にあった。
荷物の袋から二着の着替えのうち動き易そうな服を選び、川辺の大きい石の上に置いた。
男は目を逸らすこともせずジッとこちらを見ていたが、構わずぼろ布になってしまった服を脱いで川に入った。
私の裸を見た位で動揺するようなタイプではなさそうなことは分かっていたからだ。
浅い川なので水位は膝まで浸かる程度だった。
まず皮膚表面の汚れを取り、髪を洗う。
それからこびりついた垢を落としていく。
石鹸がないから綺麗にとはいかないが、かなりマシになった。

裸を見られているというので思い出したがあの男、人の裸をガン見しておいて自分の顔は見せないつもりか。
そう思ったら今までの扱いにもそうだが、無性に腹が立ったので嫌味っぽく言ってやった。

「ちょっと、人の裸見といて自分は顔も見せないの?」

[見たいのか?俺は構わないが]

「っ!?誰も脱げなんて言ってないわ!!
…貴方のその姿、記憶のそれと違うわ。
本当の姿じゃないんでしょう?」

[流石だな。やはりその眼は興味深い]


いきなり服を脱ぎ始めたそいつに思わず動揺してしまった。
男の裸なんて見慣れていたが問題はそこじゃない。
なぜ顔を見せろと言ったのに服を脱ぎ出したのか、それが問題だ。
上半身裸になった所で急に姿が変わった。
肩以上に長かったボサボサの髪は項までのサラサラに、顔のよく見えなかった眼鏡はいつの間にか見えるようになっていた。
顔は大きな瞳とシミ一つない白い肌にピンクの唇をしていて、まるで女の様だ。
体も細身なのでよりそう見える。
それでも記憶や声で男であることは分かっていたが、先程の仕返しも込めてこう言った。


「貴方…女なの?」

[どうやら下も脱がないと分からないようだな]

「はぁ!?何真に受けてるのよ、って脱がなくて良い!」


私が後悔したのも束の間、上半身だけだったのがいつの間にか奴は全裸で川に入ってきた。
しかも真っ直ぐこちらに向かってくる。
嫌な予感がしたので向こう岸に逃げようとしたが、思いの外移動が速かったせいで呆気なく捕まった。

[何故逃げようとした?]

「離してよ!貴方こそなんでこっちに来たの!?」

[お前が呼んだんだろう]

「呼んでないわ!顔を見せろって言っただけよ!!」

[顔が見たいんだろう?だから見せに来た]

「川辺にいても私は見えたわ。良いから離してくれない?」

[お前は娼婦だったのか?]

「いきなりね。しかもこんな時にそんな事聞いてくるなんて…少しは空気を読んだら?」

[空気を、読む?]

「分からないの?…まぁ良いわ。そうよ」

[なら確かめる]

「え?ってちょ、何処触ってるのよ!」

[今触っているのはt「喋らないで!」分かった]


よく分からないけど私が娼婦だったかを確かめる為に私とヤる気らしい。
視たらそう書いてあった。
それを見た瞬間一気に萎えたが、かと言ってコイツは止めないだろう。
だが果たしてヤり方を知っているのか甚だ疑問だ。
痛かったら殴る。そう決めて身を任せる事にした。


「ん、ぁ…んん!」

[ここか?]

「そこ…ぃやぁ」

[俺に嘘は吐くな]


殴る、と決めたは良いが殴ろうにも体の怠さでろくに力が入らなかった。
しかも不本意な事に思ったよりも巧いので体の力は抜けていて、今は完全に奴に全体重を預けてしまっている。不本意だ。
更に何故か私の性感帯の中でも感じる所を的確に責めてくるので、声が抑えられない。
今奴は私の一番大事な所に指を突っ込んでいる。
細かい説明はしない。察して欲しい。
そしてやはりそこで一番感じる場所を探し当てて来た。
思わず嫌がると嘘を吐くなと言われた。
反射的に出たのでよく分からないが、嘘だと見抜かれたらしい。


[これから俺が質問したら嘘は吐くな。嘘だと分かったらそれ相応の事をする]

「な、それ…いみ、わかんな」

[なら教えてやる]

「え?ひゃ…ぁぁあ!」

するといきなり指を抜かれ体を向かい合わせにして片足を持ち上げられた。
そして何の予告も無しに挿入。
いきなりの本番に悲鳴のような声を上げてしまった。
片足を持ち上げられたせいでバランスが悪いので、仕方無く奴の首に手を回すしかなかった。
因みに場所は川のど真ん中だ。
水流に唯一地についた片足をとられそうになるが、その度にまるで動じない細身の体に縋りつく羽目になった。

律動する体に熱を持つ接合部、駆け抜ける快感に生理的な涙が頬を伝った。
いつもならチカラを使って相手の望む事をするのだがそれが全く読み取れず、逆に私の弱点ばかりを突いてきた。
こんな不安定な体勢での挿入も初めてだった。
もう何が何だか分からなくなって、ただこの行為が終わるのを待つしかなかった。
それからどれくらい経ったのか、やっと終わる兆しが見えた。
だか私の意識はもう霞掛かって失われる直前だった。

[…っ、出すぞ]

「ぃゃ、ぁ…ぅ…」

[気を失ったか]


ユウキの体はもともと衰弱しており更に場所は川の中で全裸。
行為が終わる頃には夕方になろうとしていた。
普通の人間でも風邪を引くだろう。
元が病人なら尚更である。

ゴウセルは気を失ってだらりと崩れ落ちるユウキの肢体を抱き上げ、行為の跡を川の水で清めすぐに布に包んだ。
体の水分を拭き取り服を着せる。
その時に気付いたが発熱しているようだった。
弱った体で長時間水の中で行為に及んでいれば風邪を引くのは当然である。
だが人ではないゴウセルにはそれが当て嵌まらなかった為気付くのが遅れたのであった。

ユウキに服を着せた後、彼女が寝ていた時に掛けていた布を掛け、自身の体も拭いて服を着た。
荷物を肩に掛け、布に包んだユウキを背負ってゴウセルは森を突き進んだ。
向かうは今潜伏しているオーダンの村に住むとある老婆の所だ。










buprenorphine(ブプレノルフィン):モルヒネよりも受容体に高い親和性があるため、結果的にモルヒネの効果を減弱させる作用がある。非オピオイド系鎮痛薬。
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あきゅろす。
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