続き物
大犯罪者達の子育て日記6※長文注意
※ロリコンゴウセルの読み聞かせタイム







ユウキは少しなら文字が読めるし、書くことも出来る。
しかしまだ未発達なのかそれとも本人の性格故か、話し方に幼さが残っていた。
更に七つの大罪に可愛がられたお陰か素直で聞き分けも良く、特にゴウセルに対して懐いていた。

そんなゴウセルはたまに城の書庫又は自室でユウキを膝に乗せ本を読み聞かせることがあった。
就寝時以外はずっと鎧を纏っているゴウセルの太腿の上にクッションを敷き、本をめくる彼の手をじっと見ながら話を聞くのだ。
普段は機械的で感情の分からない声が、本を読む時だけは役者になったかのように登場人物の感情に合わせて声色を変えた。
ユウキはその時のゴウセルの声が好きだった。
もちろんずっと聞いているだけなので飽きてしまって気付けば寝ていることが多い。


今日ゴウセルが選んできた本は「茨姫」だ。
茨姫とは別名眠れる森の美女と言い、多くはこの名で呼ばれることが殆どだろう。
あらすじは王様にハブられた一人の魔法使いが腹いせに王女に呪いをかけ、結果紡ぎ車の針に指を刺して眠りについてしまい、王子のキスで目覚めるというものだ。
かなり要約しているが、詳しくは本を読んでほしい。

話を聞いていたユウキは途中王子が眠っている姫に会う辺りから眠ってしまっていた。
気付きながらもそれを起こすこともなくゴウセルは読み続けた。
全て読み終わった所でユウキを起こし、ご飯を食べに行くことにした。


[食べないのか?]

先程から料理を目の前にして手をつけずに、ただ見詰めているユウキを見てゴウセルは言った。

「だって…とんがってるのさわったらねむっちゃうんだよ?」

[それは本の中の話だ]

「ねむっちゃうもん!」

フォークに触ることを言っているらしい。
尖端に触れなければ問題はないはずだが。
しかしそれはあくまで本の中の話だ。
現実にそんな事があるわけがない。
だが本の中の「茨姫」は呪いのせいではあるが眠ってしまった。
そしてユウキは何故かそれを信じている。
本を読み聞かせるとよく内容を信じてしまう所があった。
一応現実ではないことを言うが、興奮したユウキの耳にはゴウセルの単調なトーンの声など入ってはいかない。
結果、後日誰かが訂正してくれるのを待つことになる。
その役割を担うのは大体キングだ。


その日ゴウセルはあえてユウキをキングのいる中庭近くまで連れて行った。
そうすればユウキはゴウセルではなくキングに遊んでとねだるからだ。

「きんぐー!あそぼー!」

「良いよ。ユウキは何をしたい?」

「んとね、おにごっこ!!」

「鬼ごっこ…(疲れそう)い、良いよ!」

「きんぐがおにさんね!」

「じゃあ数えるよ!いーち、にー、さーん、」

「ごーせぅはやくにげないと!」

[あぁ、行くぞ]

「え!?ゴウセルもやるの!?」


ユウキと二人でやるならそんなに疲れずに済むと思っていたキングだが、まさかのゴウセル参加に背筋に汗が伝った。
しかしユウキも居ることだし、そこまで本格的にはならないだろうと高を括っていた。
そんな事を考えながらキングが十を数え終わって、辺りを見回すと誰も居なくなっていた。
ユウキにしては速いな、と高く浮いて探すが一向に見付からない。
二分程探してから、もしかしたらと思い渡り廊下から城内に入り上へ向かうと、階下の廊下を歩くゴウセル。
因みにユウキはゴウセルに抱っこされている。

やはりキングの読み通りユウキはゴウセルと行動を共にしているようだ。
よくよく考えればゴウセルがユウキを一人で歩かせるわけがない。
しかしゴウセルが相手となるといきなり面倒になってきた。
捕まえるのに体力を要するからだ。
見た目通り運動が苦手なキングは、魔力に反比例して体力は底辺だった。
地面を走っての鬼ごっこではユウキすら捕まえられないだろう。


「どうやって二人を捕まえるか…」

シャスティフォルを抱えながらふよふよと浮いて廊下を歩く二人を見た。
ただ追い掛けても疲れるだけだし、効率良く終わらせる方法は無いものか…。
思案していると、ゴウセル達の前方からバンの魔力が近付いてきた。
かなり嫌な予感した。
大概バンが関わるとロクなことがないのはもう分かっているからだ。


「ごーせぅ!きんぐきた?」

[いや、だがもう見付かっている]

「よぉ♪お前等何やってんだ?ww」

「あ、ばんだ!あのね、いまきんぐとおにごっこしてるの!」

[因みにキングが鬼だ]

「へぇ、面白そうじゃねぇかw」

「ばんもやるー?」

「おーやるやる♪」


この距離からでは何を話しているかは分からないが、大体の予想はつく。
恐らくユウキがバンを鬼ごっこに誘っているのだろう。
何人かで遊びたがるので途中からディアンヌやマーガレット姫、ギルサンダー等を巻き込むことがよくあった。


「んじゃま、参加ってことでww」

キングの魔力を察知して居場所を突き止めたバンは廊下の窓を開け、窓枠を蹴ってキングに詰め寄り肩を触った。
急なバンの動きに着いて来れなかったキングは身動き出来ずに気付けば肩に触れられていた。
最初はなにがなんだか分からなかったが、徐々に状況を見てバンがわざと鬼になったことを理解した。


「さぁてと、これで俺が鬼だなww精々捕まらないように逃げろよ♪」

「は?バン、何のつもり?これは鬼ごっこだよ?」

「俺は今追う気分なんだよ♪マジで逃げねぇとユウキ以外にゃ手加減しねぇからなw」

「な、なんだよそれ!?っ、危ないじゃないか!!」

「キーングー、お前また太ったんじゃねぇの?wwこれでも抑えてんだ、ぜ!!」


鬼になった理由はただ追い掛けて攻撃したいからのようだ。
せっかく効率良く鬼ごっこを終わらせる案を考えていたというのに、これでは終わらせるどころか無事でいられるかすら危うい。

キングはバンの攻撃を寸での所で避けながら防御の為シャスティフォルを形態変化させた。
ガーディアンでバンの攻撃を受け自身は高く浮いたがすぐ追い付かれる。
一度バンを戦闘不能にするしか逃れる術はないと判断したキングはシャスティフォルを今度はインクリースさせて多方向から攻撃した。
そのうち増殖したクナイ状のシャスティフォルの一つがバンによって弾かれ、ユウキとゴウセルのもとに飛んで来た。
弾かれたそれを見た瞬間、ユウキが叫んだ。

「うわああぁぁんきんぐのばかー!!!」

「、!?ユウキ、どうしたの!?当たった?大丈夫?」

「ちがうー!!!」

[キング、後は頼んだ]

「え、ちょっとゴウセル!!頼んだ、って…ユウキ、どうしたの?」

「ぁんだよ、せっかく面白くなってきたってのにキングはお守りかww
仕方ねぇなぁ、団ちょんとこ行くか♪」


いきなりの叫び声に慌てたキングはすぐにゴウセルに抱えられているユウキのもとへ向かった。
そして何故かゴウセルから謎の一言と抱えていたユウキを手渡された。
ユウキは半泣きでキングに抱えられており、時折だめなんだよ、きんぐのばかとしゃくりあげながら呟いている。
キングには何故あやすのを任されたのか、どうしてユウキに怒られ泣かれているのか分からなかった。
そうしてキングがオドオドとしているうちに、急な中断に興が削がれたバンは標的を改めてメリオダスに変更して去って行った。


「ひっく…きんぐだめなのー!!!」

「え、それはオイラ傷付くんだけど…ユウキは何で怒ってるの?」


よしよしと落ち着かせながら何とか理由を探るキング。
すると気持ちが落ち着いてきたのか少しずつ支離滅裂ではあるがユウキは経緯を話始めた。
それを聞く限りどうやらゴウセルに本を読み聞かせてもらったが、その本のお姫様が尖った物に触って眠ってしまったらしい。
つまりそれを真に受けてバンにシャスティフォルを飛ばしたキングを怒っているようだ。
その事に気付いてすぐにキングは誤解を解くために真実を言って聞かせた。
結果尖っているものに触っても眠らないと納得したユウキはしょぼんとした様子でこう言った。

「ごめんねきんぐ…ユウキおこってきんぐのわるぐちいっちゃった…」

「良いんだよ。ちゃんと謝ってくれてありがとうねユウキ」

ちゃんと謝れたユウキの頭をイイコイイコしながら、彼女の世話全般をしている今回の元凶となったゴウセルに不満を募らせた。
ゴウセルがわざわざ自分の所にユウキを連れて来るなんて何か裏があると気付くべきだった。
しかし久しぶりに喜ぶ顔を見ることが出来たし、何より遊ぶこと自体が最近無かった。
まんまとゴウセルの思い通りになってしまったが、これはこれでバンを退けられたし結果オーライだとキングは思った。


せっかくいつもは誰かしらに邪魔されて抱っこ出来ないユウキを抱っこ出来ている事だし、ゴウセルへの仕返しついでにもう少し抱えていることにしたキング。
結局はバンも含め皆ユウキには弱いのだった。







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あきゅろす。
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