続き物
洗濯日和
※時間軸にまとまりなし、一応追放される前で主人公はトリッパーで使用人(原作無知、色々特殊)
この城の使用人は沢山いる。でも、彼ら"七つの大罪"の世話をするものはいない。
何故なら、彼らは許されない罪を犯した罪人、つまり犯罪者だ。
おかげで、使用人は誰も彼らに近寄ろうとしないので、とうとう王様から直々に呼び出しを食らい、使用人の中でも比較的新参者の(つまり使用人内での権力が無いので断れない)私が彼ら七つの大罪のお世話をすることになった。
噂では、最初に呼び出しを食らったのは私のいる塔の先輩使用人(ベテラン)だったが、突っぱねて私を生贄にしたらしい。
勿論私の下にも後輩の娘はいるが、あまりにも怯えていたので諦めて仰せを承ることにした。
王様は私に「本当に良いのか？」と聞いてきた。
その問いの意味は分かっている。
彼ら七つの大罪は皆特殊な力を持ち、驚異的な強さと扱いにくさを誇っている。
王様は私が働いているうちに能力や異世界から来たことが周囲にバレてしまわないか心配なのだ。
だが私も働かせていただいている身、恩返しの意味も込めて「大丈夫です、"七つの大罪"の世話係のお役目、お受けいたします」と深く頭を下げた。
それから数週間後…
最初は色々とトラブルもあったが、今では淡々と彼らの身の回りの世話を出来るようになってきた。
皆それぞれ大変な面があったのだが、中でも特に大変だったのは、普段からずっと鎧を纏っている"色欲の罪・ゴウセル様"の世話だ。
なかなか鎧を脱がないので、着替えをしてもらうのも大変なのだ。
王様から説明を聞いた限りではゴウセル様はなんと人の心を読むことが出来るらしい。
そんなことをされては困るので、最初のうちは避けていたが、話をしてみると案外他の6人よりも言うことを聞いてくれる。
その代り彼が納得するまで質問に答えなければいけないのが難儀だが、これで心を読まれることはないと思う。
そして今、彼らの服を洗濯し終わりやっと干すところまでいったのだが、"嫉妬の罪・ディアンヌ様"の服を干すのがこれまた大変だった。
他のメンバーの服も大きいものはあるが、如何せんディアンヌ様は巨人族のため、その服の大きさは群を抜いていた。
ここはディアンヌ様本人を呼んで干していただきたいところだが、残念なことに先ほど彼女の大好きな団長"憤怒の罪・メリオダス様"を追っかけて行ってしまったらしい。
あの大きい体の影すら見えないとなると、相当遠くまで行ってしまっているようだ。
諦めて潔くディアンヌ様の服を干そうと奮闘していると、城の渡り廊下に何やら人影が見えた。
あれが"怠惰の罪・キング様"なら、服を浮かせて干してくださるかもしれない！と淡い期待を背負って渡り廊下に走った。
人影が徐々にはっきりしていき、それが大きな鎧を纏っていることに気が付いた。
明らかにキング様ではないその姿に落胆したものの、鎧を着た人の正体を知っている私は、彼の名を呼んだ。
「ゴウセル様ー！」
[ユウキか、どうした？]
「ちょっと来ていただいても良いですか！？手伝って欲しいことがあるんです」
もしこれが"強欲の罪・バン様"であったなら、この時点で「え〜♪めんどくさそｗ俺パース♪」と言って手を振りながら立ち去って行っただろう。
だが、彼は律儀にもこちらへ来て訳を話すとそのまま手伝ってくれた。
ゴウセル様のおかげでディアンヌ様の服が干せたので、改めてお礼を言うと、
[俺は構わない。だが、なぜユウキは俺たちの使用人をしているんだ？]
とまたいつもの質問攻めが始まった。
面倒だが、干すのを手伝ってもらったのできちんと答える。
「王様から世話をするように言われましたから」
[それは知っている]
ピシャリと言い切られた。なら何故聞いた。
[他にも呼び出された者がいたらしいが、実際世話をしているのはお前一人だ。何故断らなかった？]
あぁ、つまり犯罪者の世話をする物好きな奴の心理を知りたいわけね、この人は。
「確かに私の前に呼び出された方がいるようですね。もし私が断ればさらに別の方に話が行ったでしょう。ですが皆"七つの大罪"を恐れています。だから私がお受けしました」
[……まるで俺たちを恐れていないような口ぶりだな]
「そんなことありません。勿論怖いです。でも、仕事は仕事なので」
[そうか]
それ以降ゴウセル様は一言も喋らなかった。
けれどその場から去ることもなく、大きな鎧に似合わない本を読みながら岩に寄りかかっていた。時折ぶつぶつとセリフの様な独り言を呟いている。
何故今更そんなことを聞いてくるのか、私にはゴウセル様の考えなど知る由もない。
それよりも今はこの大量の洗濯物を干してしまわねばこの後の仕事に差し支えるので、急ぐことにした。
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