続き物
大犯罪者達の子育て日記5
※幼女夢主の生い立ち(キャラの登場ほぼ無し)








その村は山奥の、周囲から隔絶された場所にひっそりと存在していた。
この小さな村の名前は大きな地図には記載されていない。
村には不思議な言い伝えとそれを裏付ける現象があった。

言い伝えとは、生け贄を捧げるとどのような不治の病も治る薬が手に入るという。
生け贄には数年に一度産まれる白い髪に赤い目の幼子を捧げる。
生け贄に捧げる幼子の項には十字の印が刻まれる。

その年、村のある夫婦の間に娘が産まれた。
喜ぶ夫婦をどん底へ突き落としたのは、その娘の持つ雪の様に白い髪だった。
長老達には娘の目が開くまで待ってもらっていたが、目を開けた娘を見て更に絶望した。
娘は、美しい赤い目をしていたのだ。

夫婦は生け贄にされる直前に娘を連れて村を出たが、一年半後に万能薬欲しさに娘を追う村人達によって捕まり、抵抗の末殺された。
だが夫婦は半年前に娘を通りすがりの商人へ売り、逃がしていた。

商人は娘を連れてとある町へ寄ったが、そこから程近い場所で起きた戦いに巻き込まれ命を落とした。
その戦いの発端は、とある凶暴な種族が町から離れた森に住まい、それを討伐に来たリオネス王国の騎士団を壊滅させたことだ。
派遣された騎士団を壊滅させた彼らの活動は更に過激化し、周辺の村や町を襲い始めた。
襲われた村の中には娘の村もあった。
この種族は喰らった者の記憶を奪い、その者の姿になることが出来た。
そうして村人の記憶から娘の存在を知った彼らは娘を探し出そうとした。
しかしその前に騎士団壊滅を知ったリオネス王国から王直属の騎士団、七つの大罪が派遣された。

娘が商人の元にいると分かり、その種族が商人を襲おうとした時、運悪く七つの大罪と鉢合わせた。
戦いは七つの大罪の圧倒的な力に成す術もなく力尽きた種族の敗けだったが、商人を殺し娘は手に入れた。
嫌がり泣きじゃくる娘を連れ、例の村へ向かおうとした時、大きな鎧が彼らを追い掛けてきた。
七つの大罪の一人であるその鎧に全滅させられた彼らは種繁栄の道を閉ざし、絶滅した。
娘を抱き上げた鎧は、自身の魔力で娘の過去と名前を知った。

大きな鎧は娘を連れてリオネス王国へ戻り、国王からの許可を貰い娘を城に住まわせた。
道中、他の七つの大罪で反対する者も居たが、団長が許可したのでそのうちとやかく言う者は居なくなった。

大きな鎧の名はゴウセル、色欲の罪を背負う者だ。
他のそれぞれの罪を背負った者達は、ゴウセルが娘を育てられる事を期待していなかった。

だが本の知識のみで子育てしようとする危なっかしいゴウセルに、周りが見ていられなくなった。
その間に娘に同情や愛着が湧き、最終的には七つの大罪全員で子育てすることになった。


娘の名はユウキ、彼女の知らない内に全てが始まり、全てが終わっていた。
ゴウセルのみが知る過去は、いつか彼女に知らされる日が来るのかも、今は定かではない。




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あきゅろす。
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