続き物
恋愛相談室
※ゴウセル登場なし、親しさの証明の続き







最近視線を感じる。
仕事中も休憩中も何処からか見られているような気がする。
そう思って辺りを見回しても、周囲には誰もいない。
視線を特に強く感じる時がある。ディアンヌと話しているときだ。
だが見られている感覚だけで、不快な感じは無かったので放っておくことにした。
そうしているうちに視線は感じなくなっていた。


ある日、午前の仕事である廊下の掃き掃除をしていると、何処からか声を掛けられた。


「ねぇ、君がユウキだよね?」


声の主を探して左右を見るが、誰もいない。


「そこじゃない。上だよ」

「…あ、キング様。おはようございます」


声につられ上を見上げると、ふよふよと漂うように空を飛ぶキング様の姿が。
バン様といる姿をよく見るが、実際に会話をしたことはあまりない。
七つの大罪の中では話しにくいが、物知りな方で、質問に対して分かりやすく教えていただける。
だがそれはいつも私から話し掛けた時で、キング様からお声が掛かることは滅多にない。


「私に何かご用ですか?」

「あぁ、うん、まぁ。ちょっとね」

私がそう問うと、急に歯切れの悪い返答をしたキング様に何かを感じた。

「なんでしょうか?」

「……いつから?」

「?、なんの事でしょう?」

「だからっ、ディアンヌといつからあんなに楽しそうに話せるようになったのか?って聞いてるんだよっ」


いやいや、私はゴウセル様じゃないので流石に一言でそこまでは分からないです。
しかし質問に答えないわけにはいかないのでそこまでの経緯を話した。
私の話を聞いたキング様は何か考え事をしているらしく、顎に手を当てて黙っていた。


「じゃあディアンヌは君と友達になりたかったんだね?

そんなことしなくてもオイラがいるのに…(ボソリ)」

やっと口を開いたかと思えば、その内容に私は驚いた。
今ボソッと凄いことを言わなかったか…?
キング様のディアンヌへの想いは何となく分かってはいたが、私が思っていたよりも大きいもののようだ。


「キング様はディアンヌを好いていらっしゃるのですか?」

「うぇ!?あ、な、なんで君がそんなこと、知って…!?」


バレバレだと思います。
周りに気付かれてないと思っているらしいキング様は、緑色のクッションを抱きながら大きな体をバタバタさせている。
正直、気付いていないのはディアンヌ位じゃ無かろうか。
見た目はちょっとアレだが、キング様のこういう天然というか素直な所が私は好きだ。

そういえばキング様は何故私にそんな事を聞いてきたのか。
まさか経緯を聞くためだけに来たわけでは無いだろう。
いつの間にか動揺から立ち直っていたキング様は、咳払いをして続きを話始めた。


「なんでその事を知ってるかはひとまず置いておこう」

置いておくのか。

「オイラにどうやったらディアンヌと仲良く話せるか教えてくれないか!?」

「え、あの…ディアンヌとは女同士だから話が弾むというのもあるので、キング様に教えられるような事ではないです」

「そこを何とか頼むよ!!実はオイラ…ディアンヌとケンカしてるんだ…」


なんと。あのディアンヌ一筋のキング様がケンカとは…。
にわかには信じがたいが、キング様の表情は真剣そのもの、というか今にも泣き出しそうだった。
この状態で放置しておくわけにはいかないので、一応事情を伺うことにした。


「ディアンヌと何かあったのですか?」

「…一昨日、ディアンヌがいつもいつも団長にくっついてばかりだったから、つい団長の悪口を言っちゃったんだ」


ショボくれながら話すキング様を見つつ、想像に難くないそのシーンを頭の中で再現する。
きっと勢いで言ってしまって引くに引けなくなってしまったのだろう。
怒ったディアンヌは聞く耳を持たない。
後悔して謝罪しようにも、彼女の頭に上った血が下がらない限り聞いてはくれない事は容易に想像できた。


「オイラ謝ろうとしたけどディアンヌに大嫌いって…」


妖精王は相当ショックだったようだ。
当時のことを思い出したのか今にも泣きそうに話していたのが、もうすでに顔は大洪水を起こしていてびちょびちょだった。
仕方なく持ち歩いているハンカチを差し出して顔を拭いてもらうが、かなりの水分を放出しているのでハンカチが吸い取りきれていない。
ここは早くお話を聞かないと廊下掃除をやり直す羽目になりそうだ。


「具体的にはメリオダス様のことを何と仰ったのですか?」

「…団長は呑んだくれで女好きだからディアンヌは騙されてるって…そしたら…ディアンヌにギデオンで追いかけられて…うぅ、うわああぁぁぁぁ」

「キング様、どうか落ち着いてください。ディアンヌは優しい子です。それはキング様が良く分かっているでしょう?」

「そ、そうだけど…きっとディアンヌは許してくれないよ…だってあんなに怒ってたんだよ!!?」

「時間が経てば怒りも収まります。それからちゃんと謝りましょう?私がディアンヌを呼び出しておきますから」

「え、良いの!?…分かった、オイラちゃんと謝るよ!」


希望を見出したのか一旦泣き止んだキング様は待ち合わせの時間と場所を決めると、大きな体を浮かせて去って行った。
ディアンヌに接触するにはまず仕事を終わらせなければいけないが、下を見るとキング様の涙や鼻水などの体液が散乱していた…ちょっと泣きたくなった。


急いで掃除をやり直してディアンヌに接触した。
話しかけたときは上機嫌だったが、いざキング様のお話をした途端、案の定鬼の形相で愚痴を吐き出し始めた。


「聞いてよユウキ!!キングったら酷いんだよ!?ボクが団長のこと好きなの知ってるのに悪口言うなんて!!」

「キング様は理由もなく人を罵ったりする人じゃないよ。ディアンヌだって分かっているでしょ?」

「…うん。ボク、キングに何かしちゃったのかなぁ」


この二人は似た者同士だ。
ディアンヌが慕う、仲間であるメリオダス様の悪口を言ってしまった自分を責めるキング様。
そんなキング様を怒りつつも、さっきの鬼の顔は何処へやら。今はやりすぎてしまったことを後悔しているのだろう。
体育座りをして顔を俯かせているディアンヌ。
どちらもやりすぎてしまった自分を責めている。

きっと、この二人には話をする時間が必要なのだ。
誤解だったと、悪かったと、そう言う為の時間を作るために、私は先ほどキング様と打ち合わせした場所へディアンヌを連れて行った。



城の庭の中でも日の当たらないこの場所は、月のある夜でも同じだった。
光の無いそこを横切ると、前方に木の幹に寄りかかったキング様が見えた。
私の役割はきっとここまでだと思い、ディアンヌに一言言ってその場を離れた。



「…ディアンヌ、その、この前はごめんね。団長のこと、あんな風に言うつもりじゃなかったんだ」

「ボクこそ、怒りに任せてキングのこと攻撃しちゃって…ごめんね」



あの二人は仲直りしただろうか。
明日は使用人たちの朝食の当番が回ってくるので、食材の下ごしらえをしながら、二人について考えた。
お二人共優しいし仲間想いだ。
だからこそ、キング様は自分が許せなかったし、ディアンヌもキング様が許せなかった。
でもこれできっと誤解は解けたはず。
ディアンヌがギデオンを振り回すような振動も騒音もないので、一先ず安心した。


次の日、大したことはしてないはずだが何故かキング様にとても感謝され、それからよく話しかけて来られるようになった。
その更に数日後そのことをゴウセル様に知られて質問攻めにされることを私はまだ知らない。




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