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Dream
第4話




しばらくオレ達が様子を伺っていれば,突然部屋の灯りが消えた。

「―――!?何が…」

遠野が驚きの声をあげる。

「…志貴,茅夏。ここを出るわよ」

静かに言われ,言うとおりに部屋の外に出れば走りだすアルクェイド。辺りは不気味なほど静寂で,おかしなことに人の気配がひとつもしなかった。

「どこに行くんだ!?一体何が…」

「……敵が来たわ」

「…敵?」

「とにかく今はここを出るしかない」

前方を走るアルクェイドと遠野の会話を聞きながらひたすら走っていれば,急にアルクェイドがある階段で止まった。

何かとオレも遠野に続いて階段の下を見れば,数匹の狼やら豹,鹿などの動物達が階段をあがってきている。
しかしその動物達はどれも恐ろしいまでに狂気に満ちた瞳をしていた。

「志貴,茅夏…先に行きなさい。――――早く!!」


アルクェイドは真っ直ぐ行けとそちらを指差し促す。
しかしいつまでも動こうとしない志貴にオレは彼の手を引いて,アルクェイドの指差す方に兎に角走った。


「遠野,大丈夫か?」

「あ,あぁ。うん…」

さっきから黙っている遠野に心配になって声をかけるが,やはりどこか歯切れが悪い返事だった。




どのくらい走ったか。
目の前にエレベーターが見えた瞬間,

《あとは儂にまかせろ》

「―――え」



キサラの声に私はそこで意識を手放した。
***

アルクェイドと別れ,佑月さんと走っていれば目の前にエレベーター。

ポーンと音をならしたエレベーターは,この階に丁度着いたのか,扉がゆっくりと開き―――!?


「伏せろ!トオノシキっっ」

「―――っ!!?」

突然の叫びの言う通りに床へと伏せた俺が見たのは,エレベーターの中から大口開けて襲ってきた狼のような獣に綺麗に蹴りをくらわしていた佑月さんだった。


「大丈夫か。トオノシキ」


庇うように俺の目の前へ綺麗に着地した佑月さんはいつもとは違う赤い瞳で先ほどの獣と対峙していた。

なんだ,さっきまでの佑月さんと雰囲気が全く違う……まるで,アルクェイドに突然襲いかかってきた時と同じような―――


「キサラだ」

「え?」

「儂はキサラ。智香の体内に巣くう九尾じゃ」

「き,さ…ら」

「此処は儂が片付ける。直ぐに真祖がくるだろう…,それまでひたすら走れ」

「でもっ」

「なあに,茅夏なら心配には及ばん」

不適な笑みを浮かべ自信に満ちた赤い瞳で俺を見るキサラは,荒い息でいつ飛びかかろうかと様子を窺っている獣に向き直った。

「お前も早くこいよ!」

背を向けながらヒラヒラと手を振るキサラを見て俺はまた走り出した。

***




志貴と別れ数分,茅夏もといキサラの下には先ほどまで息をしていた獣が赤く無惨にも転がっていた。

「弱いな。儂の力を使うまでもないわ…さあて―――,あやつらを追うか」

手に付いた血を舌で舐めとり,妖しく笑うキサラはその獣の残骸を後にし志貴の走っていった方向へと静かに歩き出した。

***


「ようやく出逢えたな…アルクェイド・ブリュンスタッド…」

「…ネロ……ネロ・カオス…」
「いかにも」

「まさか貴方がこんな下らないゲームに乗ってくるなんて…なんだか出来の悪い夢みたいだわ」

「同感だな。私もこの様な無謀な祭りの執行者に仕立てあげられるとは夢にも思わなかった。私にとってもこれは悪夢だ」

「…志貴。ここを抜けるわよ」
「おまえその腕…」
志貴は傷を負っているアルクェイドの腕を心配そうに見つめる。
「さっきのヤツでちょっと引っかけただけ」

「…抜ける?―――出口などない。ここが貴様の終着だ」
おかしそうに笑うネロ・カオス,気が付けばアルクェイドたちは多くの獣たちによって囲まれている。

「……さあ,それはどうかしら」

先ほどから心配そうに見つめる志貴をよそに楽しそうに笑うアルクェイド。

「今よっ!!!」

「任せたっ!!」

途端叫んだアルクェイドの声を合図に暗闇から出てきたキサラが火を吹く。
「貴様はっ…化けギツネっっ,佑月のモノ!!既に滅んだと聞いていたが…手間だったのかっ」


「クッ…お前の言うとおりじゃよ,儂…ワタシは佑月茅夏。日本古来から続く由緒ある退魔家系の生き残り」

一瞬獣たちが退いたそのすきにアルクェイドは壁を破壊し,志貴とともに地面へと着地してまた走りだす。続いてキサラも飛び降り,ネロ・カオスのほうを見上げれば,彼は追うことを誰かによって妨げられてたのかネロ・カオスは闇の中へと静かに消えていった。

それより上,この建物の屋上に立つ人物が一人,先日茅夏の中で見ていた時に出逢った,あのオンナ。
シエル…と云ったか。


「聖堂教会の埋葬機関,か。まったく次から次へとメンドクサい奴らが…」


さて,こちらもそろそろ限界…か。あまり長くも表には出ていられないからな。

額から伝う汗を拭いながら儂は,なんとか真祖とトオノシキの気配を追った。


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あきゅろす。
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