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Dream
第1話

キーンコーンカーン…


6時間目終了のチャイムがなる。
「起立!礼!」

教室にクラス委員長の号令が響く。

「終わった!終わったああ!」

一際授業の終わりを喜んでいるのは,オレの友達の結木城 端己(ゆきしろみずき)。懐っこい笑みを浮かべ,嬉しそうにオレの前にやって来た。

「どうしたんだよハナ。いつにもましてテンション高いな」

オレはハナの顔を見ずに,帰りの支度を進める。
そんなオレの態度も気にせずハナは理由を話しだした。

「え〜,だって今日はあの例の事件現場に行くんだよ!しかも特別に中見せてくれるって言うしさ!」

そうハナはオレには訳の分からないことを熱弁し,頭に花を咲かせながら自分の世界へトリップしていた。


「でも今日はハナ,僕と掃除当番だ…」


「あ…」

突然無表情な顔でハナに現実を叩きつけてきた人物,こいつもオレの友達で七瀬亜朱佳(ななせあすか)。剣道部に入っていて,長身で整った顔立ちをしている。口数が少ないが女子からは密かな人気を誇っている…まあ本人は全然眼中にないらしいが。ちなみに今オレは亜朱佳に後ろから軽く抱きしめられている状態。
何故か亜朱佳はオレ限定にスキンシップが激しいんだよな。


「掃除当番…」


亜朱佳は確認するようにもう一度呟く。

「う゛っ…。いいじゃんかあ!一回ぐらいさ,ね?」

「駄目」

「ええっ?!」

一刀両断,ハナのお願いは虚しくその一言で終わった。

「ねぇ,風月!!」

「へっ?!…な,なんだよ」

急にハナのドアップがぼーとしていたオレの目の前に突然きて驚いた。

「お願い!今日だけでイイから,掃除当番変わってくんない?」

一生のお願いっとオレを拝みだしたハナ。
そのあまりの必死さにオレは無意識に頷いていた。



***



「はぁ〜,やっと終わったあ」
んーと,軽く伸びして掃除用具箱に最後のほうきを入れて掃除終了。

「やぱ音楽室は疲れるな」

「ごめん風月…あとでハナにはよく言っとく,から。でも…風月と一緒に掃除できて嬉しかった…」

「え?そんな大袈裟だなあ亜朱佳は。オレで良かったらいつでも一緒に掃除するけど?」

「む…そういう意味じゃないんだけど―――ま,いっか。風月,先生に報告して帰ろ?」

「ああ,そうするか」

こうしてオレ達は教室を後にし,職員室に向かった。




***



「じゃあまた明日」

「うん,ばいばい」

亜朱佳の家とオレの家は真反対。オレ達は学校の校門前で別れた。


「にしても…ハナの言ってた事件て,何だったんだろ」

亜朱佳と別れて歩くこと数分,不意に数時間前ハナが言っていた言葉を思いだした。

ハナは学園じゃあかなりの情報通で,学校関係から街のことまで結構幅広い。勿論部活は新聞部に所属していて次期部長と言われいるらしいが,今日の事件てのもやぱ情報集めの一環みたいなもんだろう。


「―――あ,そういえば今日ってスーパーの特売―――っ!!?」
ドスっ。

鈍い音と軽い?衝撃が突如頭を襲った。

「おー!!やあっと下界に着いたぜっ」



頭上からはやたらテンションの高い声が聞こえる。

てか何が降ってきた!!なんかモフモフと動物の毛のような感触が…


「よっと」


「――――ねこ?」


そう,オレの頭上に突然降ってきた,その正体はまさかの黒猫だった。

「ん?ああ…もしかして,お前が保志乃風月?」

「え…そうだけど,何でオレの名前…てか猫喋ったっ!!!」

「おお!一発でビンゴ!」

俺って運がいいぜっ,と勝手に一人…い
や一匹で盛り上がっている黒猫は華麗に俺の言葉をスルー。

「俺の名前はラン。宜しくな,風月」

黒猫,ランは勝手にオレと宜しくしあろうことかいきなり頭の上に乗ってきやがった。

「ほれ!ぼけっと突っ立ってないで,さっさと帰るぞ。詳しい説明はそれからだ」

「ちょっ!,帰るって…まさかオレんちにくんの…?」

「当たり前だろ?今日から俺お前んちに住むから,そっちの方も頼むぜ!」



こうしてオレは奇妙な人語を話す黒猫,ランと出会い,これからやらされるとんでもなく面倒なことに巻き込まれていくのをオレはまだ知らなかった。

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