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Dream
境界線もこえていくよ(鮮花夢ほのぼの

私黒桐鮮花は昔から特別なモノ,禁忌のものに何故か惹かれてしまう。
そのせいで実の兄,黒桐幹也を本気で愛してしまった。そんな私は今式へのライバル心から橙子師に入門し魔術師見習いとなって日々鍛錬している。

でもここ最近,私は一人の女性…と言っても同い年くらいの女の子なのだが,気になっている子がいる。



「鮮花!この猫可愛いよね〜」
にへらと締まりのない顔で猫雑誌のある1ページをみている,その彼女こそ私が気になっている人物,佑月和。

「本当,可愛いわね」

「鮮花は犬派?猫派?」

「私は…猫も嫌いじゃないけど,どちらかと言えば犬派かな」

私より年上なのだが,どうもそうは見えない。しかしどこか親しみやすく,もっと話て知りたくなる…そんなどこか惹かれる不思議な人物だ。

今日なんか朝,和に電話をかけたら…


「あ!もしもし,和?」
「鮮花か」

「……てっ?!なんで式が和の携帯にでるのよ!!!」

「朝から騒ぐな。しょうがないだろ,あいつが起きないから」

和は式と昔からの家の繋がりで面識があるらしく,とても仲が良い。
簡単に言えば幼なじみ。

そして休日の日にはよくマンションに泊まっているらしい。

何だろ,この敗北感…。


「ねぇ鮮花。それで今日はどうしたの?」

気付けば見ていた猫雑誌を閉じ,和は私に尋ねてきた。その声で今までトリップしていた私は一気に現実に戻された。


「え…,あぁ!ごめん。こっちから誘っておいて」

「別に平気だよ。それに鮮花から何か相談されるの初めてだから。いつも私ばっかり鮮花に頼ってるし…,だから今日は嬉しいんだ」

「和…」

言われ自然と頬が緩む。そう,今日和を喫茶店アーネンエルベに呼び出したのは他でもない,この私だ。

「プレゼント選ぶのを手伝ってもらいたいんだけど」

「それって幹也に?」

「う,うん…,駄目,かな?」

「そういうことなら全然いいけど…もしかして幹也誕生日だった?」

突然和は険しい顔をして,よくわからないことを聞いてきた。
あぁ,和の中ではプレゼントイコール誕生日ってことなのか。

「違う,違う。ほらっ,え…と日頃お世話になってるからたまには何か感謝の意を込めたプレゼントでもーみたいな?」

「そうなんだ,私てっきり幹也の誕生日で祝い忘れたっ!て少し焦ったよ」

苦笑いを浮かべながら,良かったとこぼす和。
「でも,鮮花は偉いなあ。私も式に何かプレゼントで―――」
「それは駄目っ!!!―――――あっ…」

気付けば私は和の言葉を遮り,思いっきり否定の言葉をあげていた。
何事かと驚いたように私をみる和。
当たり前じゃないっ!式なんかに和からプレゼントなんてあげさせてたまるもんですか!!

「あ…駄目というかね…,ほらっ!式はいつも和に心配かけたり迷惑かけてるじゃない!反対に感謝しなきゃいけないのは式のほうよ!」

「うーん,そうかな?」

「そうよ,…まあ,和が,どうしてもあげたいっていうんなら…別だけど」


「―――そうだね,鮮花の言い分も一理あるし。プレゼントはまた今度にするよ」


***


「ねぇ鮮花!,これスッゴく可愛い!」
あの後アーネンエルベから出た私たちは今,ある雑貨屋に入っていた。
満面の笑みでそう言ってきた和が私に見せてきたのは,小さなガラス細工で造られた猫の置物だった。

「ん―,確かに可愛いけど…和?」

窘めるように呼べは,あ,ごめんと苦笑いをうかべ和は謝ってきた。

「ごめん,つい。今日は幹也のプレゼント選びだった。でも…どんな物がいいのかな?」

「そうねえ…」

「最近何か欲しい物とか言ってた?」

「ううん。兄さんめったに,というか今まで物欲しがったところなんか思えば見たことないわ」

「幹也って何あげても喜んでくれそうだよね」

「それが一番困るのを幹也は知らないのよ」

はあ…と私は思わず溜め息をついてしまった。



「でもそれが反対に幹也のいいとこでもあるよね」

「確かにそうだけど。でも今はそれで困ってるのには変わりないわよ」

再び何にするか悩むこと数分,突然彼女が私の手を引いて雑貨屋のあるコーナーに向かった。
「ねぇ鮮花!時計とかはどうかな」
ほらっ,と彼女はそう言ってひとつ置いてある腕時計をとって私に見せた。
「腕時計,か」

「仕事でも日常でも使えるし,あって邪魔にはならないしさ。どうかな?」

「―――そう,ね…,いいかもしれない。決めた。腕時計にしましょ!ありがと和」


和の咄嗟の機転に感謝し,私たちは早速どんな形,色がいいか選び始めた。



***


あのあとプレゼントを買って雑貨屋から出れば,日も沈みかけ,辺りは夕焼け色に染まっていた。

「今日はありがとう。和のおかげで凄く助かったわ」
「いえいえ,私も鮮花の役に立てて嬉しいよ」

お互いに笑いあっていれば,和は急に持っているバックに手をいれ何かを探しだした。

「―――?どうかした?」

「んーと,ちょっとまって…あっ,あった。これだ」

取り出したのはさっきの雑貨屋の可愛い包装紙で包まれていた小さな箱だった。
それを彼女は丁寧に開け,その中身を見せてきた。


「…これは」

見れば,最初に和が欲しがっていたガラス細工のネコだった。

「どうしても諦められなくて。あ,あとね!はい,鮮花にも」
渡されたのはガラス細工の可愛らしいウサギだった。

「これね,このネコのと対になってて。ウサギは鮮花かなーって。それあげるよ」

「えっ,悪いわよ。これ値段見たけどそんなに安い物じゃなかったし」

「いーの!プレゼントさせて。鮮花にはいつもお世話になってるから」

「和…」

気がついたら私は勢い良く和に抱きついていた。

「ありがとう,大事にする。―――あ,私もなにか」


「いいよ!私は今日の鮮花のありがとうって言葉で十分だから」

ね?と小首を傾げて笑う彼女を,私はまた強く抱きしめた。
赤くなっている頬を隠すように。


「和」

「何?鮮花」

「大好き」

「――私も鮮花大好き!」


多分私がいう大好きと和の言う大好きは意味が違う。でも私は諦めない。
今日改めてこの子が好きだ,愛おしいと実感してしまったから。





私は彼女の手をとり前を歩きだす。
最初は戸惑っていた和も気が付けばしっかりと私の手を握ってくれた。




今だけは,貴女を独り占めしてもいいわよね?





境界線もこえていくよ

(貴女を手に入れるためならどんな障害だって平気よ)





タイトル:透徹さまより

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