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Dream
第3夜




ドコダ…


ドコニイルンダ…









アァ,コンナトコニ…イタノカ







***


「吸血,鬼?」

俺が昨日殺したはずの女は真顔でそんなことを言ってきた。

「そう,吸血鬼。貴方達風にいうなら人間の血を吸って生きる怪物ってとこかな」


「うそだ…吸血鬼なんているわけ―――」


その時,一瞬でオレ達の目の前に何かがやって来た。


「真祖…,アルクェイド・ブリュンスタッド」


そう…。そこにいたのは間違い無いクラスメートの佑月茅夏だった。しかし,あきらかにいつもの彼女と雰囲気が違う。

「そうだけど,貴方何者?」


「くくくっ,貴様に名乗る名などないっ。此処で儂がお前を殺すのだからな!!」


吸血鬼と名乗る,アルクェイドに飛びかかる佑月さん。手には炎を纏っていて,それをアルクェイドに向ける。
寸前で避けるアルクェイド,強さは互角のようだが佑月さんのほうが明らかに素速い。

「貴方…その子に憑いているの?」

「憑いている?ふんっ,そんな下賤な輩達と同じにするな。儂は代々佑月家に力を貸す者」

「佑月…聞いたことあるわ。日本の古来から退魔師の家系で身体にはとんでもない化けモノを飼っているって」

「あぁ,それが儂。九尾だ。だがなあ,真祖。まだ言葉が足りないぞ…,その化けモノはな,――――吸血鬼。特に真祖を殺してやりたいぐらい目の仇にしているということをっ!!」


また再度佑月さんはアルクェイドに向かっていく。
しかしアルクェイドの顔寸前で佑月さんの手は止まった。もう先ほどのように手には炎も何も纏っていない。


「と…め…る,なっっ」

地を這うような呻き声をあげ,そのあと佑月さんはバタリと倒れ込んでしまった。




***




あぁ,熱が下がっていく。



ねぇキサラ…何やってんだよ




馬鹿な真似はやめてく――――






「う……っ」

眩しい,此処は。
目を覚ませば見慣れない天井。自分の部屋でないことは確か,まだ少し怠い身体を起こせば遠野と,あの公園で見た金髪美人さんがいた。

「…遠野?」

「佑月さん!気が付いた?」

「オレは―――」
「ペットの躾ぐらいちゃんとしていて欲しいものね」

椅子に座っていた金髪の美人さんは立ち上がり鋭くオレを睨んだ。

「おいっ,アルクェイド」

「ペットって…」

「とぼけないで。貴女が,中で飼っているソイツよ」

オレの腹を指差す金髪の美人さん。ペット…,あぁキサラのことか。
未だに状況を把握しきれていないオレに呆れたのか金髪の美人さんは溜め息をつく。


「急に襲い掛かってきた時は吃驚したんだから。あのまま殺りあっていたらどうなっていたことか」

「―――,なんかよく分からないけど,悪かった…。でもこんなこと初めてで」

「まぁ。貴女を責めてもしょうがないか,あの九尾にはきつく叱っておきなさい」


さっきまでの殺気は無く,今度は反対に柔らかく微笑まれた。

「なんか色々と迷惑かけちまったな…――――で,なんでオレこんなとこにいんだ?」




そのあとオレは色々と遠野から事情を聞いた。
まず,金髪美人さんはアルクェイドといって正体は吸血鬼。ここ最近起きている体中の血を全て抜かれて殺されているという連続殺人事件,犯人は現代の吸血鬼とか騒がれてたけど,本当にその犯人は吸血鬼らしい。そしてアルクェイドはその犯人を捜してこの街に来たという。
しかもこのアルクェイド,一度遠野に殺されているらしく,アルクェイが言うにはそりゃバラっバラにされたようだ。
遠野の目は,直死の魔眼というあらゆるモノの死の線が見える特殊なものらしく,それで吸血鬼のアルクェイドを殺せたわけだ。
そのせいでアルクェイドは通常より力が弱まってしまったらしい,凄腕の殺人鬼とみこんで遠野に協力をして欲しいと頼んでいるとこにオレことキサラが突然飛びかかって―――って今に至る

信じられない話だが全て本当のことらしい。
アルクェイドはともかく,遠野がこんな冗談を言うようなやつには思えない……あんな真剣な顔で言われちゃなあ。
それにキサラのこともあるし―――。
信じるしかない。


「はあ……なんか,普通じゃないな。てか,驚いたよ」

頭で聞いた話を整理し,オレは思わず溜め息をついていた。

「茅夏だって,普通じゃないでしょ?」

「お前なっ!」

「ははははっ,良いって遠野。確かにオレも普通じゃないな!うーん。まあこれも何かの縁だし,その吸血鬼退治っての手伝わせくれよ」

オレの意外な言葉に和んでいた空気は一瞬にして冷たくなり,アルクェイドの顔つきが変わった。

「貴女,それ本気で言ってるの?」


「そうだよ佑月さん!君まで何言ってるんだっ!!」


「いやあ…ね。協力するなら一人より二人の方が効率いいと思うし,何よりさ,この提案キサラが言い出して」

「…あの九尾が。どういう風のふきまわし?」

「え,と。先ほどの無礼は詫びよおぞ,真祖ノ姫。どうだ?その吸血鬼退治,この儂を使ってはどうぞえ?儂の力,あって損はないぞ。
ただし,一つ条件がある―――その吸血鬼退治が終わったら…儂とさしで勝負しないか?勿論,命賭けて―――。だって」

中にいるキサラの言葉を代弁すれば,突然,アルクェイドは気が抜けたのかベッドにどかっと座ってきた。

「あははははっ!,言うわね九尾。良いわ,その話のった。確かにあの力はあって損はないわ…―――でも,貴女は良いの?茅夏」

「オレ?オレは別にかまわねーよ。キサラの頼みだし。まあ色々と不安要素盛りだくさんだけど,キサラがこうやってオレに頼み事してきたの初めてだしさ」

「―――わかったわ。それじゃ茅夏,これからよろしくね」

「おう,よろしくな」

差し出された手を握り返す。
しかし,未だ一人遠野は顔をしかめていた。

「大丈夫だって,足でまといにはならないから。ほらっ!遠野も。これからよろしくな」

「あ,ああそういう意味じゃないんだけど…よろしく佑月さん」


オレが手をだせば,遠野はまだ納得していないのか渋々だが手を握ってくれた。


「でさ,その吸血鬼ってのは―――」


「……痛っ」


「どうしたの志貴?」

「大丈夫か!遠野!?」


突然頭を抱えて苦しみだす遠野。すると続いてアルクェイドの表情も険しくなった。


〈きたぞ茅夏〉

「キサラ…?」


一体何が起こってんだよ―――。











「さあ…食事の時間だ」







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あきゅろす。
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