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Dream
第7話


「ここよ」
先頭をきって歩いていた遠坂は立ち止まり前方を見据えた。

「教会…?」

「そう,言峰教会。あなた達にはこの聖杯戦争の監督役に会ってもらうわ」


止まっていた歩みをまた進め,遠坂は教会に向かっていった。俺もアベルを下におろして遠坂達に続こうとした,が。

「どうした,アベル?行かないのか」


おろしたアベルは突然立ち止まり,俯いて服をキュっと握っていた。

「行きた,くない。アベル…ここキライ」

「え…,キライって…,んー。そう言ってもなぁ」


「佑月くーん。入るわよー」

すでに遠坂と衛宮は教会の扉の前まで来ていた。
いつまでもこない俺に遠坂は痺れをきらしたのか,デカい声で呼んできた。
もう一度アベルを見てみるが,本人はてこでも動かないらしい。その場にしゃがみこんでしまっている。

「俺は行かない…なんていったら,遠坂にどやされるだろうな…」


「智香」

困ったなとうーうー唸っていれば,急に横から呼び掛けられた。

「セイバー。何?衛宮達はもうとっくに先行ってるけど」

「いえ,私は此処で外敵に備え待機しています。良かったら私がアベルを見ていましょうか?」

「そうなのか…?うーん…,わかった。それじゃお願いしてもいいかな?」


「はい」



「んじゃアベル,行ってくるけど。セイバーに迷惑かけんじゃねーぞ?」

アベルに向き直り,その小さな頭をグリグリと撫でまわす。さっきまで俯いていたアベルは顔を上げ,今にも泣きだしそうな顔で俺をみた。


「ごめ,なさい。イイ子にしてる…よ。ちか…気おつけて」

「あいよ」
アベルの頭から手を離し,俺はセイバーとアベルに背を向けて,遠坂達が待っている扉まで急いだ。



***

「遅いわよ,佑月くん。一体どのくらい待たせればきがすむの」

予想通り俺が扉な前に着けば遠坂はお怒りモードで,ギロリと睨まれた。
横の衛宮は苦笑いを浮かべている。

「ごめんて!アベルがちょっと駄々こねててさ」

「そういえばいないわね…」

「アベルはどうしたんだ佑月?」


不思議そうに衛宮が尋ねてきた。俺はさっきの一部始終を簡単に二人に話した。


「そういことだったの」

「あぁ。…にしてもアイツなんであんなに嫌がったんだろ」


ここに来るまでのアベルを思いだす。断固として動かなかったもんな。
「まぁ,私もあんまり此処は好きじゃないけど…。安心して,此処の神父とは古い知り合いだから危険はないわ」


俺と衛宮は高くそびえ立つ教会を見上げた。
教会ってテレビとかでしか見たことなかったけど…なんつうかすげえ…,こんなことで教会に来る事になるなんて夢にも思わなかったけど。

「遠坂,その神父ってのはさっき言っていた監督役なのか?」
「ええそうよ,綺礼!いるんでしょ?マスターを連れてきたわ」

衛宮の質問に簡単に相槌をうち,遠坂は教会内に入ってすぐ声を張り上げた。


「おお,そうか。ようこそ少年。私は言峰綺礼という」

そこには遠坂が言っていた神父,不敵な笑みを浮かべた言峰綺礼は俺達を迎えた。

「あんたが聖杯戦争の監督役ってやつか?」

「そうだが,君の名は?」

「…衛宮士郎だ」

「そうか…,それでは衛宮士郎。君が最後のマスターと…」

そこまで言って言峰は止めた。俺と視線が合う。今俺の存在に気付いたらしく,訝しげな顔をしている。

「…凛,彼女は?」

「ええ,そこの子佑月智香も最後のマスターよ」
いつのまにか椅子に座っていた遠坂は言峰の質問に答える。
ちなみにその子,そんな顔してるけどれっきとした男だから。そう遠坂は少々投げやり気味に付け足した。

「ほう?これは失礼した。あまりにも可愛らしい顔をしていたものだから」


「それはどうも」

思いっ切り睨んでやれば,言峰は気付いていないのかそれとも気にしていないのか,また遠坂に向き直る。

「ねぇ,綺礼…。あなた,異端の王,て呼ばれているサーヴァントって知ってる?」

「異端の…王…?」

「その佑月くんのサーヴァントがその異端の王っていうらしいんだけど」




それを聞き言峰はまた先ほどの嫌な笑みを深くした。

「そうか,今回の聖杯戦争にも来て下さったのですね…王」

静かに,楽しそうに言峰は呟く。
そんな言峰を遠坂は怪訝そうに見つめた。
「何か知っているようね」

「いや,私が知っていると言っても高が知れているが…。それでも良いと言うなら話そう」

言峰は無言で俺を見る。

「そうしてもらえないかしら」
遠坂が俺の代わりに答えた。
それを聞いた言峰はゆっくりと語り出した。


「異端の王。いつも異世界から主人(マスター)を連れてきては,聖杯戦争に突如参加してくるという謎のサーヴァント。いや,サーヴァントなのかも怪しいところだが,その正体,目的など全てにおいて謎に包まれている。
しかし,一つだけ確実に言えることは強大な力を持つバケモノ…そのぐらいだろう」


私が知っていることはこれだけだ,とそこまで言って口を閉ざした。
結局分かったことは衛宮ん家で聞いたセイバーが言っていたこととほぼ同じだった。
これ以上俺が此処にいても無意味,それにあまり此処に長居はしたくない。そう思って教会を一足先に出ようと扉に向かう。


「異世界から来たありえない8人目に,サーヴァントなのかも怪しい謎のサーヴァント…か。今回の聖杯戦争楽しくなりそうではないか少年」

含み笑いを浮かべる言峰の言葉を聞き流しながら,もう一度思いっきり言峰を睨みながら俺は教会をでた。


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あきゅろす。
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