Dream
第6話
遠坂についてこいと言われ,俺達は今ひとけのない道を歩いていた。
車道ではサイレンを響かせ救急車が数台,歩く俺達の横を通り過ぎていった。
「遠坂今の―――」
「ええ。またガス漏れ事件みたいね」
俺よりさきを歩く衛宮と遠坂達が先ほど過ぎて行った救急車について話していた。
すると,突然クイっと制服の裾を引っ張られた。
「どうした,アベル?」
「だっこ!」
「へ?だっこって,お前なぁ…。ほら」
俺が渋々手を広げればアベルは嬉しそうに飛びついてきた。
サーヴァントとか言ってもこういうとこは,普通の子供とあまり変わらないな。
「それより衛宮くん。アレなんとかならなかったの?」
「え…,だってしょうがないじゃないか。あの鎧姿じゃ目立ちすぎるから…」
先ほどからセイバーはあの鎧姿を隠すため,少し大きめなレインコートを着用している…が,これはこれである意味目立つな。
「…マスター,いくら霊体化がでないとはいえこのような扱いは…」
セイバーが複雑そうにいう。
そんなセイバーをみて遠坂は額に手をあて少々飽きれ気味にいた。
「不憫ね。未熟な魔術師と契約しちゃったばっかりに」
「な,なあ遠坂。その霊体化ってやつはサーヴァントは姿を隠すことができるんだったよな?そしたらさっきのおまえのサーヴァントは…」
話によるとどうやら遠坂のサーヴァントは今,セイバーにおわされた傷を癒やすためにその霊体化ってのになっているらしい。俺が来た時にはすでに終わっていたとこらしいが…。
ん…,いやちょっとまて。
「話の途中で悪いんだけどさ」
「どうしたの佑月くん?」
衛宮との会話を中断させ,遠坂は俺のほうを振り向いた。
「さっき遠坂は衛宮のことを未熟な魔術師だからセイバーを霊体化できない,そう言ったよな」
「ええ。でも,それがどうかした?」
「それなら俺はどうなるんだ?魔術なんか使えないただの一般人だけど…」
「そういえば…」
遠坂は視線を俺にだっこされているアベルに移す。
「それなら。心配…いらない」
気が付いたら寝ていたと思っていたアベルは遠坂に顔を向けていた,
「ちかは,何もしなくていい。霊体化だって…魔力供給だって…,アベル一人でできる。ちかは…ただ我のそばに…いて」
一度俺をみて微笑み,言い終わるとまたこて,と俺の胸に顔を預け寝息をたてていた。
「貴方は別に何もしなくていいそうよ。
まったく…本当にその子一体何者なのかしら…」
まぁ,そんな何者かもわからないサーヴァントに選ばれた貴方も貴方で何者なのかしらね。
遠坂は目を細め,俺から視線をそらして呟きながらまた先頭を歩きだし,衛宮との会話を再開した。
「俺は何もしなくていいか…」
少しずり落ちていたアベルを抱えなおし,先を行く遠坂達のあとについていった。
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