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Dream
星が瞬くこんな夜に(50000hitリク式夢)




「みんな,今日お祭り行かない?」


時刻は14時すぎ。
夏も8月に入り暑さも本格的になってきた頃。
伽藍の堂にはいつものメンバーぷらす夏休みということもあり鮮花がいる。

遅くなった昼食をすませ,一息入れていたところ和は冒頭の言葉をなげかけた。それにいち早く反応したのは煙草をふかし書類を眺めていた燈子だ。


「そういえば今日は花火大会だったな」

「ああ。だから今日は妙に賑やかなんですね」

「お祭りかあ。いいわね和行きましょうよ」

「じゃあ式と鮮花の3人で行ってきなよ」
「何を言ってる,折角なんだ黒桐も行ってきなさい」

「でも仕事が―――」

「息抜きも大切なことだ。あ,行ったついでに焼きそばとお好み焼き頼む黒桐」

「そっちが本命ですか…。はいはい分かりましたよ」

「ははは,楽しみだね式」


話もまとまり行くことになった夏祭り。和は嬉しそうに先ほどから黙っている式に微笑みかける,それに小さく式はああと答えた。







***






「…やってしまった」

がっくりとうなだれる和。
6時に近くの神社に集合しようと無事全員が集まったのは数分前。
折角だからと浴衣を着て,祭囃子をBGMに式たちと出店を回っていたのだが一瞬物珍しい神輿に目を奪われ気付けば和一人。


辺りを見回すが既に近くの雑踏に見知った彼らはいない。


溜め息をこぼしながらも人混みから外れ,通行の邪魔にならないよう閉まっている店のショーウィンドウを背もたれに寄り掛かる。


きっと今頃皆も気付き探しているところだろう。
無闇に動けばすれ違いになるかもしれないと和はここはじっと待つことに決める。




「ねえ」


待つことどれくらい経ったのか。
そろそろ待つのも飽きてきた和は地面に行っていた目線を上げようとした時,突然声をかけられた。


式や鮮花,そして幹也の誰かだろうかと期待に顔を上げたがその期待は易々と打ち砕かれる。

そこにいたのは思っていた3人の内誰でもなくいかにも軽そうな男たちで和にたいしにこりと笑みを浮かべていた。



「君ひとり?良かったら俺らと一緒に祭まわらない」

「あーすみません,友だちと待ち合わせしているんで…」

「でも君さっきから見てたけど誰も来る気配ないじゃん」



男の言葉にひくりと口元が引きつる。
どうやらこの男たちはナンパ目的で闊歩していたところ,偶然ひとりでいた和を見つけ少しの間機会をうかがっていたらしい。

なんて暇なひとたちだ。ナンパするなら可愛い美人な女子なんて沢山いるのに,きっと何度かこっぴどく振られきっと私という平凡女で妥協し今に至るのだろうと呆れながら思案する和だが,男たちはお構いなく話続けている。


「だからさ,そんな奴放っておいて男たちと遊ぼーぜ!」


「そうそう!花火がよく見える穴場,教えちゃうよ!」


ゲラゲラと下品に笑う男たち。
さてどうしようかと辺りを見回すも人は関わりたくないと綺麗に和と男たちを避け通過していく。


「んじゃま,行きますか!」


「えっ,ちょっと待っ」



さあさあと腕を取られ明らかに祭とは反対方向の薄暗い路地に行こうとする男たち。
本格的に危険と脳内でけたたましく警鐘が鳴り響く。
抵抗するも男たちは三人で己一人,これはもう叫ぶしかないと声を張り上げようとした瞬間,



「なんだてめえ,ぐあっ!!?」




和の腕を掴んでいた男は地に片膝を着き呻く。

何が起きたのかと残る男たちが狼狽えている方向に視線を向ければそこに見知った彼女の姿があった。



「こんなとこにいた」


普段式は着物に赤いジャケットを着込んでいるが今日はコバルトグリーン色の浴衣の装いにやっぱり式は和装が似合うなと場違いにも見惚れていれば,がしりと腕を掴まれた。


「あれほどはぐれるなって言ったそばからお前は…」

「返す言葉もアリマセン…」

「もういいから。行くぞ」


そう言って路地から先ほどまでいた賑やかな道に式は和を連れて行く。


「おいこら待ちやがれ!!」


「無視してんぢゃねぇええ!!」




先ほどまで呆然としていた男たちは怒りにまかせ式に殴りかかる。

が,それを式は和を背に庇いひらりと交わし男たちに手刀をくらわせ簡単にのしてしまった。

最後に式は最初に一発おみまいした和の腕を引いていた男の腕を踏み冷めた声色で一言,




「消えろ」




途端弾かれたように顔を青ざめさせ男たちは逃げ去っていった。






「ほら,もう大丈夫だ」





式の一言で今まで目を固く瞑っていた和は恐る恐る開け辺りを見回し,男たちがいなくなっていることにほっと息を吐く。



「お前は,あのままオレが来なかったらどうするつもりだったんだ」



真剣な表情で問うてくる式に和は答えにつまる。

「…ごめんなさい式」


今にも泣き出してしまうのではないかという顔の和に式は内心慌て小さく咳払いをする。
次には先ほどとは打って変わって柔らかな笑みを浮かべ和の頭を撫でた。



「無事で良かった和」





それを待っていたかのように,暗い空に光の花が咲き誇る。

気付けば花火の開始時間になっていたのだ。



「わあ。花火始まったね式」



さっきまでの表情が嘘のように子どもの様に眸を輝かせる和。

それに小さくそうだなと式は頷く。


「あ,そういえば幹也たちは…」

「あいつ等にはもう連絡した。花火見終わったらそっち向かうって」


電話越で鮮花がうるさかったなと言う式に,花火を見終わったらという言葉に首を傾げたが式が心なしか嬉しそうだったので考えることを止めた。


「来年もまたみんなで来れるといいね」



「…オレは,お前と2人で」


「え?何か言った式」


式の呟きは花火の音に掻き消され和が不思議に問う。


「何でもない。そうだな,また和と,見に行きたい」











星が瞬くこんな夜に









***


今回は甘さひかめ?絡み少なめになってしまいましたが如何でしたでしょうか。
リクエスト内容は夏祭りか海水浴で女主ちゃんに近寄る不埒者を懲らしめる話ということでしたので今回は夏祭り,花火大会に行ってもらいました。このサイト季節行事に全くと言って良いほど触れていないので新鮮で楽しかったですね。今年花火大会に行けなかった管理人の願望も含まれています!!←

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。リクエストありがとうございました!

タイトルはお察しの通り魔法使いの夜主題歌から拝借しました^^

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あきゅろす。
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