薄桜鬼小説
大人は嘘つき(ALL×千鶴)【アンケ4位作品】※3分岐有
やはり時間というものは様々な問題を解決してくれるものだな、と千鶴は最近よく会話をするようになった隊士の一人と話しながらつくづくとそう思う。
屯所に来た当初は、折角話しかけられても幹部の後ろに隠れて会話もままならなかったものだが、今ではこうして休憩時間を共に過ごす事もできるようになり、浮かれている場合ではないと知りつつも、生活が少し楽しくなったような気がする。

「でも雪村、おまえが最初来た時は、とんだ軟弱物が紛れたもんだって思ったぜ」

いつも幹部の方達の後ろに隠れてさ、と彼は笑いながら千鶴の背中をバン、と叩いたので、千鶴はその勢いに押されて思わずつんのめりそうになる。

「あ、あれはっ、緊張しててっ!!……こんなに大勢の人と過ごすの、初めてだったし……」

千鶴は当時の事を思い出し、あれはさすがに自分でも情けなかったな、と語尾に連れて声が小さくなっていったが、目の前の彼は特にそれを気にした様子もなく、でもなあ、と一度大きく伸びをする。

「なんでか知らねえけど、おまえすっごく幹部の人達に気に入られてるよなー。でもさ、ぶっちゃけ、ちょっと怖くねえの?」

彼はきょろきょろと周囲を確認すると、先ほどよりも随分と声の調子を押さえて、千鶴に耳打ちするように小声でそう尋ねる。
どこに耳があるかわからない屯所内で、幹部、という言葉を使う事によほど神経をさいているのだろうな、と千鶴は察する。

「ええと……」

(確かに不思議に思うよね)

千鶴は目の前の新人隊士を見ながら、どう答えたものだろうか、と曖昧な笑顔を彼に返す。
確かに自分はもう大分慣れてしまったとはいえ、自分を保護してくれている彼等は、一般隊士からしたら雲の上の存在なのだ。
自分のような一般人が彼等と行動を共にしている時点で不思議に思うのであろうし、ましてや常に傍に置いておくだなど、その理由を知らない彼等にとっては、千鶴がどんな特別な存在なのであろうと推測したくなってもおかしくはない。

「それは……」

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