薄桜鬼小説
過去拍手お礼1(土方×千鶴)09.1.13
「千鶴、すまねえ、ちょっと茶ぁ淹れてくれ」

と、土方に頼まれ、千鶴は淹れたばかりのお茶を盆に乗せ土方の自室へと急ぐ。
慣れてきたせいか、たかがお茶淹れといえどもコツがあるという事がわかり、今日は上手に淹れる事が出来たのでなんだか嬉しくなる。

「土方さん、ここへ置いておきますね」

「ん?ああ、悪いな」

千鶴が邪魔にならないように書机の端に湯飲みを置くと、土方は筆を休め千鶴に一瞥をくれる。

「なんだ。何かいい事でもあったのか?」

手にした湯呑みを口へ運びながら、土方は傍らでお盆を抱えたままにこにこしている千鶴に上目遣いに視線を送り問う。

「いえ。あの、大したことじゃないんですけど……いまは小姓みたいな感じで皆さんにお茶をお出ししてるじゃないですか。でもいずれ私も、その、誰かと夫婦になったりして、その時もこういう風にお茶を出したりするのかなあ……て考えたらなんだか楽しくなっちゃって」

えへへ、と少し恥ずかしそうに千鶴が笑うと、目の前の土方から、ごぶっ、とありえない音がして、千鶴はにへらと笑っていた目をぱちくりと瞬かせる。

「だ、大丈夫ですかっ?土方さんっ!!」

目の前で勢いよくむせた土方の背中を擦ろうと千鶴が慌てて近寄ると、土方はそれを左手で制して、大丈夫だと言わんばかりに乱れた呼吸を整える。

「あの……もしかして、渋かったですか?」

上手に淹れたつもりだったんですが、と見当違いに千鶴が反省していると、

「いや、茶は上手かった……悪い、もう一杯淹れてくれるか?」

と、土方は右手で顔を覆ったまま、空いている左手で湯飲みをすっと千鶴の方へと差し出した。

「あ、はい!今度は美味しくいれますねっ」

千鶴は元気よく返事をすると、抱えていたお盆に湯呑みを乗せてまた台所へと戻るべくすぐさま立ち上がった。

(土方さん、顔が紅かったけど)

お茶がへんなとこに入ったのかな?と、千鶴はまたしても見当違いな事を想像しながら足早に台所へと急いだ。


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あきゅろす。
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