□小説(ダーク系)@
9P
「親父…」
「お父さん」
「ご主人様」
「何の騒ぎだ、これは」
小柄だが、そこにいるだけで存在感と、威圧感を与える和一と秀の父親は、三人に苛立ちを込めた声で言った。
「べ、別に何でもないよ。
そうだろ秀」
「……兄さんの言う通りです」
秀も黙って相槌をうった。
この家で絶対的権限と力を持つ父親は、幼い頃から二人の息子に、一切の反抗を許さなかった。
またそれだけの恐ろしさをこの父親は持っていた。
「まあいい。
それより秀お前は、来月から隣町の学校へ行くんだ。
学校の側の寮を手配してあるから、そこから通え。
お前は頭がいい、今以上に勉学に励むんだ。
和一お前は、賭博と女遊びをきっぱりやめろ。
今までは甘くみていたが長子たるもの、いつまでも遊んでばかりいるな。
いいな、わかったな」
お互い納得がいかない様子だが、父親の鋭い眼光の前では黙ってうなづくしかなかった。
「…ところで、そこの使用人は何ボケっとしている。
仕事はどうした!
でなければすぐにでもここを出て行け!
仕事の出来ない者は、この屋敷にはいらん」
「は、はい!
申し訳ございません」
春は和一に呼ばれた時以上の早さで、仕事場へ戻った。
この屋敷から追い出されでもすれば、それこそ野垂れ死にをしてしまう。
(…それ以上に、秀様の側にいたい…)
春の思いは僕には痛いほどわかった。
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