□小説(ダーク系)@ 5P (一体全体どうなって……。 僕は確か湖に引き込まれて…それから、水の中に現れた青年の中に吸い込まれた気が。 その後の記憶がない。 これは夢?それとも死ぬ間際の、幻なんだろうか) 僕は、ふと自分の手を見て驚愕した。 その手は見慣れた自分の手とは全く違うものだった。 細く骨ばった手は、酷く荒れて所々に青あざがついて痛々しかった。 そして、立上った僕はさらに驚愕することになった。 一気に何十センチも背が伸びたような視界の変化に、ガラスに映った顔はあの、青年のものだった。 (どっ、どうし…何で!僕じゃない! 僕はどこに行ってしまったんだ) 「また、夕飯抜き…か。 どちらにしても、夕飯と呼べるようなものじゃないから、いつも通りどこかで野草でも見つけてこないといけないな」 僕は、いや青年は何もかもあきらめたような切ないため息をつくと、長い廊下を歩きはじめた。 青年が歩けば僕の視線も変わっていく。 それはどう考えても、あの時から、この青年の中に僕の魂だけが入りこんでしまったような、そんな感じだった。 そして僕の目に映る景色は、自分の生まれた時代のものとは思えないものばかりだった。 いつも当たり前のように目にする、電化製品などどこにもない。 古い民家としても、あまりにも現代とはかけはなれていた。 [前へ][次へ] [戻る] |