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□小説(ダーク系)@
1P
◆花売りA◆
(売り・切ない・血)
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カツン カツン。
今日も石の階段を降りてくる足音がする。
けれども今はその音も遠く小さく聞こえる……。


ここは花売りの町「ダダール」老若男女金さえ払えば買うことができる。
僕がいるのは若い男を売り物とした店だ。
僕がここで体を売りはじめたのはまだ幼い頃だった。
何歳だったなど覚えてなどいない。
そして時間(とき)は過ぎ気がつけば僕はこの店でも年長にあたる歳になっていた。

若い男を売りものにしている店にとって、歳をとった売り物は指名もなくなり客もつかずのやっかいものになるだけだ。
自然と入り口から遠く離れた檻にいれられることになる。
今まさに僕はその檻にいれられていた。

僕の入れられた檻の奥にはもう檻はない……。
売れなくなってこの店で下働きとして一生こき使われることや、青年〜熟年を売り物にした店に売り飛ばされるのは運がいいほうで僕達が一番恐れているのは……。




「おい、ダリアでてこい!
お前をカルバの店が買った」

ダリアは一瞬にして顔色を変えた。

「…ダリア……」

僕はダリアへ声を掛けようとして途中で止めた。
僕が何か言ったところで何が変わるわけでもないし、ダリアが救われるわけでもない。
それに人の心配をしている余裕など僕にはなかった。

「いいよ、コリウス……。
お前だってこの先わからないんだ。
無理に慰めてもらっても俺も辛いよ。
そうか…今日でお前ともさよならだな
また会うなんてことがないといいなコリウス」

「……」

僕の胸は苦しくなり目頭が熱くなったが何も言えなかった。

ダリアが買われた先の店「カルバ」は、買春をするものにとって命が終わることを意味していた。

この花売りの町の中で裏の顔を持つ違法な店「カルバ」。
違法でありながら「カルバ」はこの町では黙認されていた。
増えすぎた買春者を間引く目的と、高額な金が町に流れ込む理由でだ。

「カルバ」に買われた買春者は半年生き残ればよいとされていた。
そう「カルバ」は残虐な客を喜ばせる為の店で買春者の生死を問わない。
その分市場の値段よりも高額になるが公に出来ない性癖を持つ客があとをたたなかった。

ダリアにまた会えるということは僕自身も「カルバ」に買われた時。
僕の命の終わりが決まったときだ。


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