□小説(ダーク系)@ 2P 「正巳?いるのか」 それはある土曜日のことだ。 私がちょっと留守にした間に、正巳の姿が家の中から消えていた 「正巳を知らないか?」 「正巳ならお友達の所へ遊びに行くって言ってでていったわよ」 「友達…お前の知ってる子か?」 「…なんだかボソッと言ってたわね。 お兄ちゃんのお家とか、お父さんには内緒とか…あらお父さんに内緒なのに、しゃべっちゃったわね、いけない」 私は一瞬にして、顔から血の気が引くのを感じた。 (正巳は!あいつらのところへ…) 妻が何か声を掛けてきたが、私はそれを無視して慌てて車へ飛びのった 「…二度と来たくはなかった…」 私は遠くからでも確認できるかつては、自分も住んでいた家屋を見てそう呟いていた。 本当ならもっと遠くに逃げたかった… だがあの家から逃げたあと父親が、脳溢血で倒れ病院通いの日々が始まり、父親が倒れたショックと看病で母親も入院。 そんな両親を置いて遠くへ逃げるわけにはいかなかった 近場で働き口を探し、そこで今の妻と会い結婚し、今に至った。 「今はそんなことで悔やんでいる暇はない。早く正巳を助けださないと」 私は車を隠すようにして雑木林の道に停め、あの家に足早に近づいていった。 (正面からじゃあいつら相手は無理だ。…たしか庭側に人一人が通れるぐらいの隙間があったはずだ) 「この…辺りだと…ここだ」 私はうっそうと繁る木々の隙間を抜け、なんとか家の庭に入りこんだ。 木々の後ろに身を隠し家の方をうかがっていると突然、激しい衝撃を頭に受けて私は意識を失った。 ◇ 「…んっ…」 (…頭が痛い…) 私はズキズキと痛む頭に目を覚ました 「目が覚めましたか?礼司くん」 その声と口調に私は一気に目が覚めた 「澄人…さん」 「ふふ、久しぶりだね。しかし君は変わってないね 昔のままだ…」 頬に手を伸ばされて、私は慌ててその手から逃れ様としたが頭が痛み思うように体は動かなかった。 「昔…のまま、それは貴方にそっくりかえしますよ」 私こそその言葉を口にしたかった。今、目の前にいる人物の方が全く変わっていないように見えた 「嬉しいですね…歳をとって、ジジイになったとでも言われたらショックですからね」 澄人さんはそう言って両手で、私の顔をそっと包みこんだ (くっくそーそう言ってやればよかった) 私は心の中で舌打ちをしたが後の祭りだった 「そっそれより、いきなり人の頭を殴ったりして暴力を振るうなんて訴えますよ」 「人の家の庭に勝手に入りこんで、家をうかがっているような人がよくいえますね」 「うっ…」 私は言葉に詰まった 「それは、正巳の…」 つい息子の名前を口に出してしまい私は慌てて口を閉じた 「『まさみ』?誰です」 興味深げに私を追求する澄人さんの様子に、私はへたに 隠し立てすると話しがややこしくなると思い渋々口を開いた [前へ][次へ] [戻る] |