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□小説(ダーク系)@
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がっしりとした体型のわりに、どこか子供のような未成熟なイメージを受ける顔は、確かにハンディーを負ったもののようだった。

「…放して…このまま逃がしてくれ…頼む、お願い…」

俺は、男の腕を軽く掴み懇願してみるが、男は俺の存在自体を感じていないかのように、黙々と茂みを上がり続けていた。

「無駄だよ。
彼は僕の言葉しか聞かないし、僕の命令にしか従わない。
彼は僕に絶対的な服従と、信頼をもっているんだ」

池田は、雅と呼ぶ男の肩を叩き笑顔でゆっくりと口を動かして言った。

「僕は雅くんを、世界で一番信頼しているからね。
僕には、雅くんの手助けが必要なんだ」

その言葉に今までぼんやりとしていた雅の表情が、パアっと明るくなり、頬が膨らみ赤く染まった。
その言葉がなりよりも嬉しくて堪らないように…

「ふふふ、雅くんはいい子だね。
僕がいない間に、逃げだしてしまうような亮二くんとは正反対だ。
亮二くんも彼のように、僕のいう事をなんでも聞くといいのにね」

(一生、死んだってお前の言うことを聞くものか!)

口をきくのでさえ出来なくなっていた俺は、瞳で池田に訴え、そのまま暗闇に落ちていった。


「目が覚めた?」

「んっ…」

「随分良く眠っていたね。
あんまり眠っていたから死んでしまったんじゃないかって、何度も息を確かめちゃったよ」

俺は絶望した瞳で、見慣れた薄暗い天井を見つめた。

「…どうして、どうして俺の居場所がわかったんだよ…池田…」

「んっ?だって亮二くんの着る服には、全て発信機が縫い付けてあるからね。
文明の力ってすごいね、今はこんなに小さな発信機があるんだよ」

池田は楽しそうに俺の服の裾を裏返して、少し盛り上がった縫い目から、発信機を取り出した。

(発信機!…それで…)

「でも、これ亮二くんにバラしちゃったから、別の方法で亮二くんに発信機をつけないといけないね」

池田が怪しく笑い俺はゾッとした。

「知ってる?海外では、捨て犬を減らす為に犬の首の後ろに飼い主がわかる登録番号を入力したチップを埋め込むんだって、もしその犬が捨てられた場合チップの登録番号で、飼い主がわかるんだ」

「そっそれが…どうし…!!まっさか…」

俺は大きく喉を上下させた。

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あきゅろす。
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