[携帯モード] [URL送信]

□リクエスト小説@
4P
「…眠っちまったか…今日の俺はどうかしてるな」

ロンは、眠るティンの髪をそっと優しく撫でた。



「――で、ティンあれからロンとはどうなんだ?
何もされてないか?」

パトリックはティンの顔を見つめた。

「う…ん別に大丈夫だよ」

(本当は、あれからもずっと抱かれ続けているなんて言えない。
パトリクは僕のことを、心配してくれているんだから)

それにどうしてだか、最近ロンに抱かれるのは苦痛ではなくなってきていた。
だが、別のことがティンには辛かった

(ロンは僕じゃなくて、お姉さんのティアンさんが好きなんだ。
僕はその代わりなだけ)

「んっ?ティン暗い顔になってるぞ。
何か他に、悩みごとでもあるのか?」

「…パトリク…パトリクには好きな人はいないの?」

「俺か?いるよ」

「えっいるの?」

「しっ失礼だな俺にだって好きな人くらいいるさ。
なんだよ……ティン、もしかして好きな人でも出来たのか」

パトリックはニヤニヤと笑う。
このごろティンは、町に出ていろいろな人間と出会う機会が多くなった。
可愛いくて、素直なティンは皆に可愛がられていた。

「好き…かどうかはよくわかんない。
でもその人は、僕じゃない別の人が好きで、僕はそれを思うとここが痛くて苦しくなる…」

ティンは自分の胸を押さえた。

「初恋が切ない恋か…」

パトリックはティンを引き寄せてヨシヨシと慰めるように頭を撫でてやる。


「おい!パトリックそいつに何してる!」

「わっ!ロンお前は毎度、いつの間にか後ろに立ってるのやめてくれよ。
心臓に悪い」

そんなパトリックをロンは突き飛ばし、その腕からティンを無理矢理奪い捕る。

「前から気になってたんだが、パトリックお前ティンに気があるのか?」

「はぁ?」

パトリックは目を丸くする。

「とぼけるなよ、こいつは俺のものだ。
俺だけがこいつをいいように出来るんだからな」

「ははは、ロン俺はノーマルだし、ちゃんと好きな娘がいるよ。
ティンのことは弟みたいに思ってるだけさ。
しかし、今のお前の口調、恋人を捕られそうな男のセリフだぜ」

ロンは顔を赤く染めて怒鳴る。

「違う!こいつは俺にとってモノなんだよ」

その言葉にティンは顔を伏せた。

(僕はロンにとってモノでしかないんだ…)

沈むティンの様子に、ロンは心の中で大きな溜息をついた。

(こいつにとって、俺は恐ろしくて乱暴で自分を傷付ける人間でしかないんだ。
今さら優しくしたって遅い。
それならいっそ嫌われた方がいい)

そう思いながらも、『嫌われる』という事に対してロンは胸の奥がチリっと痛んだ。

(どうしたんだ俺は、俺が好きなのはティアンだこいつじゃない)

二人の複雑そうな顔に、パトリックも何故か複雑そうにな顔をした。




「リンダ聞けよ、どこでいつそうなったかしらないけどさ。
ロンとティン、いつの間にかいい感じになってるみたいだぜ」

「何よ、いい感じって仲良くなったって事?」

「仲良く以上ってことさ」

「待ってよ、嘘…嘘でしょ」

「嘘じゃないよ。
あれはどう見てもお互いが好き同士なんだけど、二人共それにお互い気がついてないんだよな。
見てて歯がゆいくなるから、いっそ俺がキューピット役でもするか」

「違う…わよ…そんなの…嘘よ!」

リンダは玄関へと走りそのまま外へと飛び出していった。




「…俺ってなんて嫌な奴なんだ…最低だな…」

パトリックはリンダが去ったあと呟いた。

「おっおい!パトリック!お前ティンを見なかったか?」

「えっ?ティンなら買い物に出掛けたのが二時間前だから、今なら家にいるんじゃないのか?」

「帰ってきてないんだ…」

ロンの顔は硬く青ざめていた。




「あの子ならもう帰ってこないわ」

「リンダ?…」

「今、何て言ったんだリンダ」

「だから帰ってこないっていったのよ。
だって私が、愛護団体に通報したのよ。
この町に愛玩用の人間がいるって」


「な…んでリンダお前…」

「だって見ていられなかったよ。
ロンがあの子を相手にしている姿が。
金持ちと同じようなレベルで、ティンを道具と見ていたんでしょ?
だったらもういいじゃない、あんな子がどうなったって」

ー!−バシッ

「キャッ」

ロンの右手が口よりも早く、リンダの頬を叩く。
そしてロン自身がそのことに驚いた表情を浮かべていた。

「なんで?…」

リンダは頬を押さえ、口を開いた。

「本当なのね…ロン。
貴方ティンに本気になったんでしょ。
はじめはティアンの代わりのつもりだったのに…」

「違う…俺はティアンを…」

「もう自分の気持ちに素直になれよロン。
今、お前はティンとティアンの両方から告白されてどっちの手を取る?」

パトリックは自分の手を見つめ考えるロンの言葉を待った。

「さぁ、言えよどっちの手をとるんだ」

「俺は…」

ロンの口が開いた。



「へぇーこりゃまた、どこの血統書付きが紛れこんだんだよ」

「確かに見た目は血統書付きなんだよな。
残念なことに、貧乏人どもの巣窟のKタウンで見つかった上、犯られちまってるらしい」

「あーあーそりゃダメだ。
金持ちほど潔癖でこだわる奴が多いからな。
それでここに連れてこられたって訳か」

白衣を着た男達が、小さな檻の中で震えるティンを覗きながら話す。

「おいっ出てきな」

男の一人が檻の鍵を開けて、ティンを無理矢理外へ引きずりだした。

[前へ][次へ]

4/6ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!