□リクエスト小説@
1P
39000キリバンリクエスト♪
★夢に成れ
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39000キリバンリクエスト
氷狩さんへ
(切ない・胸がキューンとなるお話)
最後にはハッピーエンド♪
◆◆◆まえがき◆◆◆
39000番キリバンリクエスト頂きまして
ありがとうございます♪頑張ります
この小説は氷狩さんへ捧げます。
当サイトの大ファンとのお言葉頂まして
目尻が下がり口元がゆるみっぱなしです
(*^^*)
◆◆◆ ◆◆◆
「もう、二度と会えない。
最後にもう一度だけ会いたかった」
そう一緒にいた頃言えなかった。
たった一言の言葉を伝えたい…
「愛してます」と
ティンは体中に付けられた管や機械のコードを見つめ、そっと瞳を閉じた。
(ここに連れてこられて何年…
ううん、本当は何日程度かもしれない)
ティンは今までの事をゆっくりと思い出す。
最初の記憶は薄汚れて、悪臭と死の香りが漂うコンクリートの狭い部屋。
ティンは、上流階級の人間の愛玩用としてこの世に生まれた。
しかしそれは国に認められていない、非合法のブリーダーの元だった。
金持ちに高く売れるというだけで、人工授精でこの世に生み出された命は、世話の大変さや食費、経費のかさみですぐに放棄された。
残されたのは死のみだった。
そんなティンが救われたのは、運がよかったのかもしれない。
◇
「大丈夫?
酷いわ。
こんな状態でこの子達をほおって逃げるなんて許せない」
虚ろなティンの目に、優しげに微笑む女性が映る。
「おいで、もう大丈夫。
お姉さんがちゃんと面倒みてあげるね。
元気になったら、いい里親さんも捜してあげるからね」
この頃のティンは、言葉をしゃべることは出来なかった。
「あ…あ…」
(助けてくれてありがとう)
感謝の言葉は、彼女には伝わったが彼女はさびしそうに目を伏せた。
違法で生まれた愛玩用の人間は、保護団体に保護されたのちしかるべき里親へと引き渡されるが、人権というものを持つことは出来ない。
結局、彼らのほとんどは、性の奴隷か召使でその生涯を終えることが多かった。
(この子達に幸せな未来への希望を、もっとあげたいのに……)
彼女は小さなティンを抱きしめた。
◇
「それじゃ、宜しくね。
この子達皆、栄養失調な上、不衛生なところにいて病気になっているかも知れないから慎重に運転宜しくね」
女性は生き残ったティン達を車に乗せると、別の車に乗り込んだ。
車がスムーズに移動しているかのように思えたとき、ティン達の乗った車が、急にハンドルが切り後ろの車を振りきり山奥へと消えた。
「やったな、これで結構な額の金が手に入るぜ」
「今は見た目が悪いが、たらふく食わせれば見た目も多少よくなる。
限られた金持ちの連中だけが買える愛玩ペットだからな、裏で欲しがる奴はいくらでもいる」
ティン達の乗った車を運転していた男達はほくそえんだ。
「さて、早いとここいつらを例の場所に連れていかねーと、保護団体に見つかるとやっかいだ」
「そうだな急ぐぞ」
男達は急いで運転席に戻ると車を発進させた。
ギュルルルー
急いで発進させたのがまずかったのか、地盤がゆるんでいたのか車の後輪が空回りをおこし、前輪の力に負けて左右へ振られる。
「おわっ!」
「何だ!」
その勢いで車は道からはずれ、はるか下の崖側の川へとスローモーションのように落ちていった。
◇
「キャッ何よそれ!」
リンダはロンが肩に背負ったものを見て、怪訝な顔をする。
「何って一応人間みたいだけどな」
「…死んでんじゃないの?」
ロンの肩にかつがれた人間は、ガリガリに痩せボロ布といったほうがいいような服を身に着け、体はぐっしょりと濡れていた。
「生きてるぜ。微かだけどな、心臓が動いてる」
ロンはその人間を床へ下ろした。
「おっ何、何?何かあったのか?」
「あっパトリック見てよ!
これロンが拾ってきたのよ」
「へっ?これ人間だろ。どうしたんだよロン」
「川で拾った」
「川で拾ったって?」
「ああ、他にも何人か流れてたな」
「――でこいつだけをなんで、連れてきたんだよ」
「こいつ以外は皆、死んでだからだ。
明快な回答だろ」
ロンは黙るパトリックとリンダに、その人間を押し付け
「後は面倒だから任せる。
俺眠いから寝る、起こすなよ」
と軽く手を振った。
「えっちょっちょっとロン!」
リンダは慌ててロンに声を掛けるが、その声はバタンというドアの音に消されてしまった。
「どうする?リンダ。
しかもこいつ…人間じゃないぜ」
パトリックは、ぐったりとした人間の首の後ろの髪をかきあげた。
その首の後ろには丸いくぼみがあった。
「これって…もしかして」
「まぁ100%あってると思うけどさ。
愛玩用のペット特有の『へそ』だよな」
「ええ、私も聞いたことあるわ。
愛玩用の人間は、普通ならお腹にある『へそ』が人工的に造られるから首の後ろにあるって……」
「うん、人間との区別の意味もあるらしいけどさ、これやっぱりまずいよな」
パトリックとリンダは、その人間を見つめて押し黙った。
◇
「リン…ダ、パト…リク」
「そうそう覚えが早いわね」
リンダは嬉しそうに笑う。
「俺の名前の方は違うぞ。
いいか、パ・ト・リ・ッ・クだ。
リとクの間に小さいッが入るんだもう一度言ってみろ」
「パトリク…」
はぁーとパトリックはため息をついたが、苦笑いして
「いいさ、三日でここまで喋れれば上等だろ」
ロンが拾ってきた愛玩用の人間を押し付けられた二人だったが、人間でないとしても再び捨ててしまうことなど出来るはずもなく、手当てをして食事を与え世話をしていた。
「はじめは回復しないで、死んじまうかと思ったけど、元気になって良かったな。
もうちょっと太れば、すごいベッピンになるぞこいつ」
「ベッピンって、いつの言葉よもう。
でも確かにさすが愛玩用ね。
男の子だけど綺麗な顔してるわ」
リンダはそっと髪をなでてやる。
その人間はちょっとくすぐったそうにしていたが、黙っておとなしくしていた。
「おっ元気になったのかそいつ」
鼻歌交じりに現れたロンが、リンダとパトリックに声を掛けてきた。
「元気になったのか?ですって。
勝手に人に押し付けて、もうっ大変だったんだから」
リンダはロンを睨みつけた。
「悪かったな。
仕方がないだろ、俺に任せたらこいつ助からなかったぜ絶対」
「そりゃいえる」
パトリックが頷く。
「でこいつなんて名前だよ」
『えっ』
リンダとパトリックが同時に声を上げた。
「そういえば聞いてなかったわね。
貴方の名前は何?」
その人間は、目を何度かパチパチさせて意味がわからないというように首を振った。
「んっと他の人が、貴方を呼ぶときなんて言ってたの?」
その人間は口を開いた。
「オイ…オマエ…ソコノ…」
「だから名前っていうのはね……」
説明しようとしたリンダは、説明をやめ感じたことを口にした。
「もしかして貴方名前がないの?」
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