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□リクエスト小説@
3P
「鬼頭くん、バイクが嫌なら他は何がいい?」

「鬼頭くんが本当に好きなんだよ。
背が高くでかっこよくて、優しくて。
こんなに人を好きになったの初めてだよ」

「鬼頭くんが邪魔だと思う奴がいたら、僕がなんとかしてあげるよ」

「鬼頭くん」

「鬼頭くん…」




「あーーーっくそっ…
俺はどうすればいいんだよ!」

一人残った教室で、俺は机を両手で叩いて叫んだ。

「おっおい鬼頭どうかしたのか?」

たまたま忘れ物をして教室に入ってきた近藤が、俺に声を掛けてきた。

「お前の言うことを信じて斉藤先輩から離れておけばよかったよ…」

俺は両手で頭をかかえた。

「やっぱまずい人だったのかよ。
ちょっと気にはしてだんだけどさ。
お前が平気な顔してたから、噂は所詮噂かと思ったんだけど…。
よかったらもうちょっと詳しい話兄貴に聞いてやるよ。
何か分かるかもしんねーし」

「サンキュ、近藤」

かかえていた頭を上げ、俺は近藤の顔を見た。
おそらく俺の顔はかなり情けない表情をしていたに違いない




「鬼頭!!こっ近藤が!」

近藤に相談してから3日後。
近藤の勧めもあって、なるべく斉藤先輩と顔を会わせないよう勤めていた俺は、教室に入るなりただ事でない表情をした同級生に声を掛けられた。

「近藤がどうかしたのか!」

「昨日事故にあって重体だって…」

「事故、重体…なんで」

「なんでも車にひき逃げされたって、その車もまだ見つかっていないって…」

同級生の声がどんどん小さくなる。

(近藤がひき逃げ…)

俺の胸に嫌な予感が湧き上がってきた。

「斉藤先輩…俺の友達事故にあって…」

「――悲しい顔してたから何かあるのかな〜とか思ったけどあの事故のことだったんだね。
事故にあったのって、僕と同じ中学にいた子の弟でしょ?可哀想だね」

俺はチラチラと先輩の表情や仕草を伺う。

(まさか…先輩が近藤を?)

俺の胸にその疑惑がひろがり、どうにもならない。

「俺、その近藤から先輩の噂聞いたんですよ」

「ふーんそうなんだ」

「申し訳ないけど俺。
先輩とはこれ以上付き合うこと出来ない…」

俺の言葉が終わるやいなや、斉藤先輩が俺に掴みかかってきた。

「だめだめ!そんな事許さない!
鬼頭くんは僕の側にいるのがいいんだ。
それが鬼頭くんの為なんだ」

「俺の為って、そんなの先輩の勝手な思いこみだろ」

俺は掴みかかってきた手を強引に振り払う。

「違う!思いこみなんかじゃない。
初めて会ったときから僕は……僕は君のことを親友以上の存在だって感じたんだ」

その熱くて真剣な眼差しに、俺は一歩後ろに下がった。

「悪いけど、俺は男なんかに恋愛感情は持てないし絶対ごめんです」

「大丈夫僕がその気にさせてあげる。
人間の気持ちなんていくらでも変わるじゃない…」

「かっ変わらない、俺は絶対変わらない!」

俺は先輩に背を向けて走った。
とにかく恐ろしかった。
その日の夜、俺はどこまでも先輩に追いかけられる悪夢にうなされた




次の日の夕方俺は近藤の見舞いに病院を訪れたが、面会謝絶の札を見てうつむいた。

(…そうだよな、重体だもんな……死ぬなよ頑張れよ近藤)

重い足取りで俺は病院から出ると、商店街をノロノロと歩きはじめた。
大型ショッピングセンターに客を取られたのか昔ながらの商店街には人もまばらで、なんとなくもの寂しさを感じた。

家への近道である裏路地に入った俺は、このとき後ろから近づく車に全く気が付くことがなかった。



「先輩!一体どういうつもりですか!
これ誘拐と同じですよ!」

俺は無理矢理連れ込まれた車の中で騒ぐが、隣に座る先輩には動じた様子はない。

「誘拐?人聞きがわるいね。
好きな人を自分の家に招待するのは普通でしょ」

「招待?これが?やっぱり先輩おかしいよ」

俺は車の取っ手をガチャガチャと慣らす。

「無駄だよ外からロックしてあるから」

横目で俺を見て軽く鼻で笑う先輩は、冷酷な狂気を秘めているようで俺の背中がゾクリとする。

それに、この車からして嫌なものを想像して仕方がなかった。
黒塗りのベンツにはスモークガラスが貼られ、座席のシートは革張り。
運転手と助手席に座る男達は体格が良く黒服に色のついたサングラスで

――これじゃまるで…

「まるでヤクザじゃねーか」

俺は口にする。

「ふふ、ヤクザか。
当りだよ。
僕はこの辺一帯を治めるヤクザの一人息子だよ」

「なっ!…」

「あの噂は半分あってたんだよねー。
ヤクザの愛人じゃなくて、ヤクザの息子が正解だったわけ」

先輩の手が俺の腿の上にそっと置かれた。

「嫌だーぁ帰してくれよ!
家に帰してくれよ!」

俺は部屋のドアを叩き続けていた。


車がついた先は大きな屋敷で、その門には“昇竜組”の文字が、そして俺は出迎えた男達によって抵抗する間もなく、屋敷奥の部屋に放り込まれた。

「帰して…俺…」

ドアを叩き続けた手は赤くはれ、俺は床にズルズルと崩れ落ちた。

「鬼頭くん入るよ」

俺は顔を上げた。

「せっ先輩許して下さい俺…俺。
先輩の言うことなんでも聞きますから」

「鬼頭くんにいいもの見せてあげるよ」

先輩が、俺の目の前にしわになった紙を差し出す。
その紙には乱れた字と赤茶色の染みがついていた。

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あきゅろす。
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