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□リクエスト小説@
2P
「何だよ早く言えよ気になるだろ」

「わかったよ言うよ。
その…ホモのヤクザの愛人だって…」

「・・・」

「ブッワハハハ。
なっ何だよどんな噂かと思ったらいきなりぶっ飛んだ噂だな」

俺は思わずふいてしまった。
あの先輩がホモでヤクザの愛人?
今まで付き合ってみて、そんな所微塵も感じなかった。
ただ口調はおかしいけどな。

「まだあるんだよ!よく聞けよ鬼頭。
斉藤先輩に近づく野郎は、皆大怪我したり死んだっていう噂もあるんだぜ」

「死んだり…?」

「そうだよ、だからお前も気をつけろよ。
分かったか!」

近藤はそれだけ言うと、向こうから近づいてきた斉藤先輩の姿を見つけてサーッと姿を消した。

「あっ鬼頭くんじゃないのー」

近藤が姿を消すと同時に、斉藤先輩が俺に声を掛けてきた。

「おっす斉藤先輩」

俺はさっきの話しのせいもあって、つい斉藤先輩の顔を見つめてしまった。

「?僕の顔に何かついてる」

「えっいや、そんなことないですよ」

その辺の女の子に負けない…いやそれ以上に綺麗な顔。
この容姿なら男から言い寄られてもおかしくないかもしれないが、ヤクザの愛人とはね。
噂って怖いもんだな。

「…くん、鬼頭くんってばどうかした?
さっきから変じゃないの?」

「あっはい、すみませんちょっと…」

「まあいいか、それより今日ゲーセンにでもいかない」

「おっ♪いいっすね付き合いますよ」

家に帰っても勉強しろと五月蝿い親がいるだけの俺は
二つ返事をした。



「今日は楽しかったです」

ゲームのしすぎで肩がこった俺は大きく伸びをした。

「うん、僕も久しぶりに楽しかったよ。
友達とこうして遊ぶことなかったから……」

「えっ…」

「友達か誰かに聞いたでしょ、僕の噂」

「…」

「いいんだよ、無理して僕に付き合わなくても」

俺はしばらく黙っていたが、思い切って口をひらく。

「気にならないといえば嘘になるけど、俺は噂ぐらいで先輩のこと嫌いにならないですから」

斉藤先輩の頬がほんのり色づき、綺麗な顔が泣き笑いのような表情をつくった。

「…そうか、ありがとう鬼頭」


俺はこの時のことを一生後悔することになった…。



まさか先輩が、こんなに綺麗で優しかった先輩が、あんなにも変わるなんて俺は思ってもいなかったのだ。



「鬼頭くん、今度の日曜日どこかに遊びにいかない?」

嬉しそうな斉藤先輩の様子に気が引けたが、俺はその日他の友人と出掛ける約束をしていた。

「すみません、その日はちょっと約束があって…」

「約束?そんなの断ればいいでしょ。
僕と遊ぶほうが優先じゃないの?」

斉藤先輩の目がつりあがる。

(ちょっと待てよ、先輩の言い分っておかしいよそれとも俺の聞き間違いか?)

「いや、約束はあっちの方が先だから」

バシッ

「っ…」

俺は最後まで言い終わる前に、頬を叩かれた。

「なっ何するんですか!先輩!」

「鬼頭くんは僕のことを最優先にしないとダメでしょ
僕は君の親友じゃないの?」

「――っていつから親友になったんだよ!
しかも最優先にしろって人のこと叩いて何様のつもりだよ!」

これには俺も頭に血が上った。
もともと気が強い俺はつい。

「噂で聞いたホモでヤクザの愛人って本当なんじゃないんですか!」

口から出た言葉に次の瞬間、俺は言いすぎだったと心の中で後悔した。


「…ごめん…僕。久しぶりに出来た友人だったから…」

その悲しげな表情に俺はつい同情をしてしまう。

「――すみません今のは俺が悪かったです、本当にすみません」

俺の態度に斉藤先輩の表情が明るくなった。

「そうだ、お詫びに何か欲しいものない?」

「欲しいもの?」

「そう、鬼頭くんが欲しいもの。
いっぱいあるでしょ」

そりゃ俺には欲しいものは沢山あるが、いきなりそんなことを言われても。
俺は腕を組んで考え込む。

「じゃあ、バイクが欲しい!」

ほんのジョークのつもりで俺は笑いながら言った。

「ふーん、バイクかぁ〜
うん、分かったよ」

これまた冗談なのか、真面目にうなづく斉藤先輩を見て。

(良かったー機嫌が直ったみたいだな。
しっかし、さっきの変わりようにはマジびっくりしたぜ。
やっぱりどこか一線おいて付き合ったほうがいいのかもな…)

俺はそう心に決めた。






「どう、このバイク鬼頭くんにプレゼント♪」

俺は驚きのあまり声が出なかった。

今、俺の目の前にはピカピカの新車のバイクが置かれていた。

「気に入らない?そんなことないでしょ」

「気に入る気に入らないって事じゃなくて……マジこれ俺にくれるんですか?
本気にしちゃいますよ」

「本当にあげるよ。
はい、バイクのキー」

手渡されたバイクのキーを、俺は思わず地面に落とした。

「もうしっかり持たないとダメでしょ」

「あっ…その…俺」

ここにきてさすがに俺は怖くなってきた。

「俺こんな高いモノ先輩から貰う理由ないし」

「そんなことないよ。
僕は鬼頭くんが喜んでくれればそれでいいから。
僕は鬼頭くんが大好きだから、なんでもしてあげたいんだ」

先輩は目を細めて笑った。

「いっいやその、とにかくこれ、俺もらえませんから」

俺はバイクのキーを受け取らずに、用事があるからと先輩から逃げた。

ヤバイっマジヤバイ…普通じゃないよ。
家が金持ちだとしても、最近ダチになったばかりの奴に50万ぐらいするバイクをポンと買ってあげるなんて奴いないだろ。


脅え始める俺と対象的に、斉藤先輩の行動や言動はエスカレートしていった。

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あきゅろす。
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