□リクエスト小説@
最終P
「ほら早く腰動かせよ。
俺をイライラさせんな」
「だ…だめ…痛くて…動け…な…い」
「また、俺が動かないとダメなのか」
「いっ痛っ…自分で…動くから…待って」
他人に容赦なく与えられる痛みより、自分でセーブした痛みのほうがまだましだ。
芳樹はそっと腰を動かし、少しでも痛みのないように早く慣れるようにと注意を払う。
「んっ…だいぶ良くなってきたな。
俺の仕込みがよかったからかな」
真吾は芳樹の顔を引き寄せキスをした。
舌を絡ませた濃厚なキス。
そして、キスが終わると決まったように
「好きだ芳樹愛してる、俺を裏切るなよ」
と言う。
それは社会にでてから真吾がよく口にする言葉。
『好きだ、愛してる』
芳樹は、その言葉だけを素直に受け止めるようにしていた。
でなけば自分が悲しすぎる。
自分を愛してくれる人間に抱かれているんだ、そう芳樹は自分に言い聞かせていた。
「裏切らない…から……あっ…ああっ」
何度も感じた感覚が、次第に芳樹の意識を支配していく。
「くっ…イキそうだ……このままだとズボンが濡れるな。
芳樹…そのまま机の上に仰向けに…なれ」
一つになったまま芳樹は手を伸ばして、机の端を持ち体を机の上にゆっくりと乗せた。
「よ…しいいぞ」
真吾が激しく腰を打ち付ける。
「んあっ…ああっ真…吾…んっ…あーっ」
部屋に二人の大きなため息と、荒い息が満ちた。
◇
「えっ…今なんて真吾」
「聞こえなかったのか、じゃあもう一度言う俺結婚することになった」
「結婚…」
「ああ、親父の会社が危ないんだよ。
俺の結婚相手はある実業家の娘だから、いわゆる政略結婚だな」
「じゃあ僕とは」
「お前とは別れる気はない。
俺が好きなのは芳樹だけだ」
そう真吾に言われても、芳樹は納得いかなかった。
(裏切るな!浮気するな!俺の言うことを聞け!と今までがんじがらめにしておいて、今更、政略結婚とはいえ裏切るのか真吾)
「そんな顔するなよ、お前はずっと俺のものだからな」
「…そう…」
芳樹は感情を殺しそれだけを口にした。
◇
「明日、新婚旅行なんだろ、こんな所にいていいのか?」
シャツだけを羽織った芳樹は、真吾の背中に向かって声を掛けた。
「いいんだよ、あの女。
俺が逆らえないととわかってていい気になってるから、一緒にいるとイライラすんだよ」
真吾は芳樹に引き寄せる。
「お前といる方が幸せだよ芳樹」
「真吾…」
芳樹は真吾を両手で抱きしめる。
「ベッドにいく?」
「ああ…」
◇
「んっ……やぁ…だめ…真吾…んっ」
「んだよ芳樹、今日はやけに感度いいな」
仰向けになって足をM字に開き、真吾を受け入れる芳樹は激しく真吾を求めた。
「もっと…もっと激しく…僕が壊れる…くらい」
「芳樹…」
真吾は更に腰の動きを激しくした。
「ああーっあーダメ!!まだ足りない」
芳樹は真吾の背中に手を回した。
「痛っ」
背中に走った痛みに、真吾が顔をしかめた。
「芳樹、お前俺の背中にツメたてたのか…」
「…そ…う驚いた?
……明日の新婚旅行の初夜、きっといい思い出ができるよ」
「お前まさか……」
真吾の顔が引きつっていく。
「奥さんになる女(ひと)、真吾の背中のツメ跡見てどう思うのかなぁ……」
快楽とは違う満足気な微笑みが、芳樹の口元に浮かんだが、その顔は悲しみをたたえていた。
「僕は真吾を裏切ってなんていない。
……裏切ったのは君だよ真吾」
真吾はしばらくの間、芳樹を見つめていたが、スッっと芳樹から身を離し、身支度をすると黙って外にでていった。
静かになった部屋に、押し殺した嗚咽の声だけが残った。
〜完〜
◆◆◆あとがき◆◆◆
親友の一線を越えての裏切り話しになりました。
初めは親友を人様に売り渡しちゃうようなお話を考えていたのですが、これだと親友同士のやりとりが少ないかな?と思いまして、今回のお話になりました。
少しでも気に入って頂けると嬉しいです。
それではリクエストありがとうございました♪
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