□リクエスト小説@
4P
(くそっ動け、動いてくれよ足。
こんな所でうずくまっていたらずぶ濡れになっちゃうじゃないか)
「くっ……」
優希は両手で地面を押してその力で立ち上がろうとしたが、足はガクガクと震え、全く力が入らなかった。
(家田が戻ってきてくれれば……)
先に行った家田が自分の姿が見えないと気がついて戻ってきてくれないかと優希は家田が走り去った先を見てみたが、視線の先にその姿をとらえることは出来なかった。
(家田は後ろを振り返るようなタイプじゃないし、思い込みが激しいから、僕も校舎に戻ってきているとでも思ってサッサッと教室に向かったんだろうな)
「……冷たい」
その間にも雨は容赦なく優希の体を濡らしていった。
「なにしてる」
「えっ?」
頭の上から声がしたかと思うと優希の体は宙に浮いていた。
いや新名に抱きかかえられていた。
「えっ……あっ……あの」
「動くな。落とすぞ」
「は、はい……」
有無を言わさない声に優希は体を新名に預けるようにして力を抜いた。
「あの……恥ずかしいから」
「恥ずかしい?何がだ」
「だってその抱っこなんて……」
「ここで下ろしてちゃんと歩けるのか?」
「……」
優希は押し黙った。
確かに新名の言うとおりここで下ろされてちゃんと歩ける自信はなかった。
(でも恥ずかしすぎるよ、皆が見てる……)
優希は教室から自分達を見下ろす他の生徒の視線から逃げるようにしてうつむき、自分の手をモジモジと動かし続けた。
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