□リクエスト小説@
3P
「ひ〜っあいつマジ怖っ。
体はごつくてデカイし、声も低くて腹に響いてくるし、とにかく威圧感ありまくり〜」
「うん、確かにそうだけど、彼の作品は繊細で温かくて柔らかくてどこか懐かしくて……嫉妬してしまうぐらいいい作品だよ」
優希は少し空を仰いで言った。
(そう懐かしい、幼い頃にどこかで目にした絵とすごく似てる)
「嫉妬か、俺もそう感じるな。
同じ芸術家の卵として、作品の良さがよくわかるだけに、いい作品と認めつつ悔しいってのが本音だな」
「僕も悔しいとも思ったよ」
「それじゃ、二人でいつかあいつをギャフンといわせるぐらいの作品を描いてやらないといけないな」
「そうだね」
優希と家田は大学のキャンパスを歩きながら、途中自販機でコーヒーを買うと中庭のベンチに腰掛けた。
「痛っ……」
「どうした?」
「足が少し痛むんだ。
もうすぐ雨が降ってくるかも」
「雨が?」
家田は手の平を上にして空を見上げた。
確かにどんよりとした薄灰色の雲が空に広がり青い空を覆い隠していた。
「優希の足天気予報はよく当たるからな。
校内に戻ったほうがよさそうだ」
「せっかく外の空気を吸いながらコーヒーを味わおうと思ったのに残念だね」
「まっそれは次回ってことだな」
家田がベンチから立ち上がるとすぐにポツポツと雨が降り始めた。
「優希急げ、濡れちゃうぜ」
「うん」
小走りに校内に向かった家田の後を追った優希は、不自由な足で精一杯走っていたのだが、途中で後ろから来た他の学生にぶつかられて地面に倒れこんだ。
「いっ痛っ」
「あっすみません大丈夫ですか?」
「あっいえ平気です……」
軽く大丈夫と笑顔で手を振ったものの、運悪く不自由な足を地面に強く打ちつけなかなか立ち上がれなかった。
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