□リクエスト小説@
10P
「なんだ、言えないようなことか?
テストで悪い点でもとったのか?」
「ううん、違う…図書館で友達と調べものしてて…」
「そうか、それよりお前も男なんだから、部活動でも入ったらどうだ」
「考えてはいるけど…勉強の方が好きだから」
「勉強が好きか。それもまぁ、いい事だな」
瞬は、ホっと胸をなで下ろした。
一瞬、まさか!というような思いがよぎったが、父親が全く別のことを口にした事と、咄嗟(とっさ)とは言え、言い訳が思ったよりもサラリと口から出たからだ。
(勉強なんて、本当は好きじゃないけど…)
瞬は、最後に言い訳した内容について少しだけ、後悔した。
◇
「えっ…!」
自宅についた瞬は、驚きのあまり目を丸くし言葉が続かなかった。
「―お前には悪かったが…なかなか言い出せずにいてな。
結局、当日の紹介になってしまったな」
父親が今まで見たことがない、照れくさそうな顔で頭をかいた。
「初めまして、瞬くん」
笑顔で頭を下げる上品そうな婦人に、瞬も慌てて頭を下げた。
「はっ初めまして」
「ゴホン、改めて紹介しよう。
瞬、こちらは東 小百合(あずま さゆり)さん、私の会社の取引先の事務員さんで、その…お前の新しい…だから…なんだ…『母親』になる人だ」
「母親…」
瞬は思わず口に出した。
そして、続く父親の言葉にさらに驚くことになった。
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