□小説@ 4P 「こちらでお待ち下さい。 すぐにお相手のものが来ますので」 晶は今では入ることのない奥の部屋へと新を通した。 「サンキュ。これお駄賃」 挨拶代わりとでもいうように、チュと軽く晶の頬にキスをした新は、晶の反応に目を丸くした。 「えっ?なんだよ。 保のペットだったくせして、これぐらいで驚いたような顔して……。 真面目によく保のペットだったなお前。 それじゃやっていけないだろ普通」 「い、今は博様のペットですから……」 「ふーん、本当に今まで保のペットにはいなかったタイプだな。 まっ安心しろよ、俺は保と好みのタイプが一緒だから、お前には興味ないからさ。 そんなに俺を警戒するなって」 「警戒なんて……少しびっくりしただけですから、それでは失礼致します」 晶は少し逃げるようにして、奥の部屋を後にした。 ◇ 「晶、お客さんってどんな奴だったんだよ」 「えっ、あの…」 社長の甥ということは博のいとこにあたる。 自分の父親だけでなく、いとこまでそちらの趣味があると知れば、博がショックを受けるのではと晶は口ごもった。 「何?もしかしてまたタヌキじじいが来て、晶に言い寄ったのか!」 博は目を吊り上げて、晶を追及した。 ここにくる客で、応対する晶に目をつけてくるものも少なくない。 以前、応接間で晶を無理矢理ソファーに押し倒した礼儀のなっていない客がいたのだ。 その客がデップリと太りタヌキのように腹が出ていた為、博は今でもタヌキじじいと毛嫌いしていた。 「違います。そのタヌ…いえ多島(たじま)様ではなくて、その…社長の……」 「父さんの?」 「あっえ…と、博様はご親戚の方で社長と仲の良いかたをご存知ですか?」 「なんだよ、全然わかんないよ晶。 一体何が言いたいんだよ」 「とっとにかく…」 はっきりしない晶に博の方がカンを働かせた。 「ふーん、わかったよ。新さんが来たんだろ」 「ご存知でしたか…良かった」 「そんなに俺に気を使わなくてもいいよ晶。 本当に晶は優しいな」 博は胸をなでおろした晶の腰に手を回した。 (ちぇっ…やっぱり俺はまだまだ、晶より背も小さいし、腰に手を回しても格好がつかないや) 博が心の中で、舌打ちを打っているのを知らない晶は博が、自分に甘えてきたと思いその体を両手で抱きしめた。 「ばっ!晶、俺をいつまでも俺を子供扱いするなっ! その手を離せよ!」 「はいっすみません」 晶は突然怒り出した博にびっくりして慌てて手を離した。 「……ごめん。晶に八つ当たりした。 それより晶、もう俺は子供じゃないんだから。 子供扱しないでくれよ」 「はい、わかりました」 晶は、優しく微笑みながら頷いた。 [前へ][次へ] [戻る] |