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□小説@
4P
「こちらでお待ち下さい。
すぐにお相手のものが来ますので」

晶は今では入ることのない奥の部屋へと新を通した。

「サンキュ。これお駄賃」

挨拶代わりとでもいうように、チュと軽く晶の頬にキスをした新は、晶の反応に目を丸くした。

「えっ?なんだよ。
保のペットだったくせして、これぐらいで驚いたような顔して……。
真面目によく保のペットだったなお前。
それじゃやっていけないだろ普通」

「い、今は博様のペットですから……」

「ふーん、本当に今まで保のペットにはいなかったタイプだな。
まっ安心しろよ、俺は保と好みのタイプが一緒だから、お前には興味ないからさ。
そんなに俺を警戒するなって」

「警戒なんて……少しびっくりしただけですから、それでは失礼致します」

晶は少し逃げるようにして、奥の部屋を後にした。



「晶、お客さんってどんな奴だったんだよ」

「えっ、あの…」

社長の甥ということは博のいとこにあたる。
自分の父親だけでなく、いとこまでそちらの趣味があると知れば、博がショックを受けるのではと晶は口ごもった。

「何?もしかしてまたタヌキじじいが来て、晶に言い寄ったのか!」

博は目を吊り上げて、晶を追及した。
ここにくる客で、応対する晶に目をつけてくるものも少なくない。
以前、応接間で晶を無理矢理ソファーに押し倒した礼儀のなっていない客がいたのだ。
その客がデップリと太りタヌキのように腹が出ていた為、博は今でもタヌキじじいと毛嫌いしていた。

「違います。そのタヌ…いえ多島(たじま)様ではなくて、その…社長の……」

「父さんの?」

「あっえ…と、博様はご親戚の方で社長と仲の良いかたをご存知ですか?」

「なんだよ、全然わかんないよ晶。
一体何が言いたいんだよ」

「とっとにかく…」

はっきりしない晶に博の方がカンを働かせた。

「ふーん、わかったよ。新さんが来たんだろ」

「ご存知でしたか…良かった」

「そんなに俺に気を使わなくてもいいよ晶。
本当に晶は優しいな」

博は胸をなでおろした晶の腰に手を回した。

(ちぇっ…やっぱり俺はまだまだ、晶より背も小さいし、腰に手を回しても格好がつかないや)

博が心の中で、舌打ちを打っているのを知らない晶は博が、自分に甘えてきたと思いその体を両手で抱きしめた。

「ばっ!晶、俺をいつまでも俺を子供扱いするなっ!
その手を離せよ!」

「はいっすみません」

晶は突然怒り出した博にびっくりして慌てて手を離した。

「……ごめん。晶に八つ当たりした。
それより晶、もう俺は子供じゃないんだから。
子供扱しないでくれよ」

「はい、わかりました」

晶は、優しく微笑みながら頷いた。

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