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□小説@
2P
(根岸くんが優子ちゃんみたいに笑ってくれたらな…
いつも無表情で冷たい顔しててさ。
……でもだからこそ、たまに見せてくれる笑顔が可愛くて)

「あーやっぱりなんか変だよ山本くん。
何か隠してない?」

おそらく俺は根岸くんが笑う姿を頭に描いて口元を緩ませていたのだろう、それに優子ちゃんが再び鋭くつっこんできた。

「ごめんマジなんでもないって、可愛い顔で睨まないでよ優子ちゃん」

「えー可愛い!
本当!嬉しい♪お世辞でも嬉しい」

ピョンピョンと飛び跳ねて喜ぶ姿に、俺は一安心した。

(これでなんとかやり過ごした…よな)





「それじゃあ俺は夏美とちょっと寄り道して帰るけど、優子ちゃんと山本はどうする?」

俺はちらりと優子ちゃんを見た。

「今日は……
もう家に帰らないといけないから、山本くん近くまで送ってくれる?」

「ああ、いいよ」

俺は笑顔で頷いてみせた。

ラブラブモードの西井と夏美ちゃんと別れ駅に向かう途中、優子ちゃんが口を開いた。

「…山本くん、ごめんね。
今日は無理させちゃった?」

「えっ?」

俺は優子ちゃんの言葉に目を丸くした。

「だってわかるよ、山本くん私を見ながら別の誰か…ううん、山本くんが今好きな娘(こ)と比べてたでしょ」

「……」

(おっ女の子って…するどい…)

俺は正直最後までシラをきりとおすか、ここで正直に告白するか悩んだが


「―ごめん、でも優子ちゃんは可愛いし一緒にいて本当に楽しかったよ」

「うん、ありがとう……。
いいよ今日は私、本当は期待してなかったんだ。
でも山本くんに見てさ私のタイプだったし、すごく話しも合ったから…残念だな〜。
…で山本くんが今好きな娘ってどんな娘なの?」

「うっ…そっそれは…」

俺は一瞬間をおいた。

「その…可愛いより美人タイプで、気が強くて口が悪くて手がすぐ出て、いつも感情を表に出さないんだけど
寂しがりやなところがあって…」

優子ちゃんの目が見開かれていく。

「すっすごい子なんだね手がすぐ出るって……。
暴力ふるってくるの?その子」

「…そっそうだな。
結構、力が強いかも……な」

(それから性別が優子ちゃんと反対なんだ)

俺は心の中で苦笑した。




「おっはよー。ね・ぎ・しくん♪」

俺は前を歩く根岸くんの背中に、元気よく声を掛ける。

(もちろん毎朝待ち伏せして、必ず声を掛けている。
…俺ってストーカーのちょっと手前かも…)

「……」

「おっす♪根岸くん」

一声くらいで挨、拶がかえってこないのもわかっているので俺は再度声を掛けた。

「……るさい」

「んっ?」

「毎日、朝っぱらからうるさいんだよお前は、本当にお前はバカだ」

「えーっ根岸くんこそ、毎日俺のことバカバカってひどいよ〜」

こうやって少々怒らせはするが、毎日根岸くんと会話するのを俺は楽しみにしているのだ。

(こうでもしないと会話が続かないからな)

俺は根岸くんの隣をさりげなく歩きながら、楽しい時間を過ごした。

「おっしゃ!!
今日は根岸くんにどつかれなかったぞ!!
俺に心引かれてきた証拠だぁ!」

「……そんなわけないだろ。
根岸もいい加減あきれてるんだって」

あいからず西井は、俺の希望を打ち砕く発言をする。

「お前なぁ〜昨日、お前の頼みを聞いてやった恩人に向かってその言い方はなんだよ」

「おっそれは悪かったな、ごめんごめん」

口では謝ってはいるものの誠意が感じられず俺は西井を睨んだ。

「あっ根岸!」

ふいに西井が俺の後ろを指差した。

「えっ♪」

その言葉に喜んで振り向いた俺は、根岸くんの姿がないことを不審に思い西井の方へ向き直った。

「おい!西井!根岸くんどこにも…」

俺の言葉はそこでとまった。
さっきまでいたはずの西井の姿は、忽然と消えていたのだ。

(あの野郎〜ったく俺をからかいやがったな)



「―ついてくるな」

根岸くんは冷たい視線で俺をチラリとみた。

「なんだよ〜一緒に帰ろう♪根岸くん」

俺は猫なで声を出してみる。

「気色悪い声を出すな」

「ならもっといい声出してあげるよ」

俺は根岸くんの腰に手をやり、強引に自分の方へ引き寄せるとその耳に低く甘く囁いてみせる。

「一緒に帰ろうか根岸くん。
ついでにこのままベットまで直行しよう」

ー!−

ドスッ

「ううっ…」

俺は久々に根岸くんの強烈な、ボディーブローをくらって呻いた。

「にっ二度とそんな言葉を俺の耳元で囁くなこのバカ」

耳まで真っ赤にした根岸くんが、俺を怒鳴りつけるが俺は
(真っ赤になっちゃって…可愛い♪)
などと思っていた。

そんなとき俺の背後から俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
その声に俺の心臓はドクリと大きく鳴る。


「……ゆっ優子ちゃん?」

「やっぱり山本くんだ♪
後ろ姿だったから不安だったけど、あっててよかったー♪この学校にかよってるんだね」

そこには有名な女子高(可愛い子が多いので有名)の制服に身をつつんだ優子ちゃんが、笑顔で立っていた。

「あっ…うっうんそうだけど…」

俺は歯切れの悪い口調で、優子ちゃんにこたえるがその間も俺の全神経は隣に立つ根岸くんへと注がれていた。

(やばい!やばいよ!
昨日のデートの件がばれたら…)

「えっと…山本くんのお友達の方ですか?」

優子ちゃんは少し頬を赤く染め、首をかしげながら根岸くんと見た。



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