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□小説@
1P
●歯医者
(歯医者?×患者)
ー僕の間違いー

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「なんだよ〜折角来たのに休みかよ〜」

衣田 智視(いだ ともみ)は、休診の札の下がる歯科医院の入り口で舌打ちをした。

(しかたがね―他のところを探すか…)

ニ、三日前から痛み出した虫歯は、ズキズキと痛み智視をイラつかせていた。

「んー他っていってもこの辺に歯医者ってあったかな?」

智視は辺りを見回しながら、ブラブラと繁華街を歩きはじめた。
しかしいざ、探すとなると中々見つからないもので、智視はキョロキョロとあちこちに視線を送り続けていた。


(おっ!!ようやく見つけたぜ)

40分後。
薄汚れたビルの二階に、歯医者の看板を見つけて智視は安堵のため息をついた。

「汚ったねーな…大丈夫かここ?」

智視は両側から壁が迫ってくるような狭い階段をあがり
薄汚れた店舗が並ぶ廊下を歩くと、目当ての歯医者の立て札を見つけドアを開けた。

「いらしゃい…」

ドアを開けた目の前には、これまた狭いカウンターがありどこか生活に疲れたような中年の男が座っていた。

「えっと…君?は」

「あっ歯が痛くて」

「ああっ歯医者さんだね。
それなら三つ目のドア、診察部屋と書かれた部屋で待っててくれるかな。
すぐに先生がいくから」

「はぁ…わかりました」

(なんか変…な歯医者だな?俺の気のせいか?)

智視は首をひねりながらも診察部屋のドアを見つけ中へ入った。

部屋の中央に診察用のイスと器具らしきものが置いてあり智視は幾分安堵した。

(歯医者…だよな確かに)

するとコンコンとドアをノックする音が聞こえ、すぐにマスクをした白衣の男が部屋へ入ってきた。

「んー今日の患者さんだね。
診察するからほら早くイスに座って」

「あっはっはい…」

智視は慌てて診察用のイスに座った。

「で君、歳はいくつ?」

「?ええっと19歳です」

「そうか大学生なのかな?」

「はぁ…そうですが…」

「そうかそうか若くていいね」

歯医者はいやに嬉しそうに頷いた。

「それより先生早く歯を診てもらえませんか?痛くて…」

智視はイライラしながら言った。

「積極的だね、うん実に宜しい。
じゃあ早速、イスを倒すからね、注意してね」

診察用のイスはゆっくりと後ろへ倒れていった。

「まずは腰を固定しようか?」

歯医者はイスについたベルトで智視の腰をしっかりと留めた。

(なんで腰なんかにベルト締めるんだ?
俺が子供みたいに治療を嫌がって、暴れるとでも思ってるのかよ、この医者は)

智視はそう思いながらも患者としての立場で黙っていた。
すると歯医者は智視の両手までも肘掛にベルトで固定した。
さすがにここまでくると智視も慌てた。

「えっ…ちょっと先生。俺、子供みたいに暴れたりしませんよ」

「んっああ、そうだね。
でもね、いざとなると逃げた子が過去にいてね。
それじゃいけないだろ」

歯医者は目を細めた。
そのマスクの下の口が苦笑いなのかどうかは智視には知るよしもなかった。



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あきゅろす。
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