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振り回されてる話(鉢久々)



「お前モテるよな」

たいして興味もない。ましてこの問いに意図など有るわけがない。ただの気紛れ。しかしその問いは図らずしも俺を振り回しているのは揺るぎない事実。正直、質が悪い。

「別に、モテねえよ」
「あれ、昼休みのあれ、告白じゃなかったの?」

それでいて、変な所で勘が鋭いから厄介だ。もっと他の所で勘を発揮してほしいものですがね。特に私事の恋愛関係で。というかそこだけ勘が働かないのは何故でしょうか、久々知さん。俺は眉間にしわを寄せ盛大に溜め息をついた。まあ、こいつは溜め息の原因が自分だなんて夢にも思わないだろうが。

「…別に、好きなやつから好かれなきゃ意味ないだろ」
「ふうん。まあ、そうか。あれ、三郎好きなやついるのか?」

お前だ、馬鹿。声を大にして言いたい。言っても軽く流されるのがオチだけど。

「いない」

だから伝える言葉は想いとは常に逆。例えば素直に伝えたらどうなるか。

『いるよ』
『え、誰?』
『…お前だよ』
『…ずるい…俺だってお前のこと…ずっと…』

こんなご都合展開。天地がひっくり返っても起きません。ええ、確信があります。確率?残念ながら100パーセントです。

『いるよ』
『え、誰?』
『…お前だよ』
『へえ、そうか。なるほどな』

この辺りが妥当な反応だろう。余りにも想像し易くて悲しくなるんだが。

「もったいないな。お前器量いいのにな」
「…お前が俺を誉めるなんて珍しいな」
「そうか?世話焼きの友達思いな奴だと評価してるけど。お前のこと」
「…あっそ」
「うん」

100パーセントと言い切った後に何故、珍しく俺を評価する発言をするのか、この男は。無自覚に俺の気持ちもて遊ぶの本当にやめて欲しいんですけど。

でも、惚れた弱みだろう。喜んでも無駄だと分かっているはずなのに、だらしなく緩む頬が押さえきれない。熱い身体は言葉よりずっと正直で、自分自身に少し嫉妬した。




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あきゅろす。
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