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好みの話をしよう(5年)


※現パロ、ほんのり鉢→久々表現






1カップル、2カップル、3カップルに…あ、子連れの夫婦。どこを見渡しても幸せそうな連ればかりが目につく。それに引き換え俺らは、いい大人が5人。しかも全員男。竹谷は自分の置かれた状況に身震いをし、大きくため息をついた。

「おかしい」
「は?お前の頭の話か?それなら肯定せざるをえないな」

にやにやとした笑みを浮かべる鉢屋にいつもなら反抗するが、竹谷は気分がのらなかった。神妙な顔をすると優しい不破が心配そうに話しかけた。

「どうしたの?はち?元気ないね」
「雷蔵…いや、夏休みだってのに何で俺らには女ッ気がないんだろうなと思ってなー」
「それははちに彼女がいないからだよー」
「勘右衛門!みなまで言うな!…そうだよ。彼女がいないんだよなあ。てか三郎も兵助もモテるじゃん?なんで彼女いねえんだよ。おかしいだろ」

急に話をふられた久々知は内容を少し整理し、当然かのように答えた。

「好きな人いないもん」
「じゃーさ!兵助はどんな奴がタイプなんだ?」
「わーそれちょっと興味あるー!兵助そういう話に疎いから」

尾浜まで身を乗り出し久々知に問答する。不破はやれやれ、と言った様子ではあるが心なしか楽しそうであった。

「うーん。考えたことないな」
「兵助は心が広くて面倒見がいい人と付き合うと思う」

本人を差し置いて尾浜は豪語した。

「なんでさ」
「兵助恋愛に淡白だからそのことを理解してくれる人じゃなきゃ付き合えないよー。そんで兵助って男前なのにぬけてて常識はずれなとこあるから面倒みてくれるタイプ」
「俺の好きなタイプじゃなくて俺と付き合えるタイプじゃん」
「大差ないよ」

満面の笑みを浮かべる尾浜に呆れながらも、久々知もひとつ笑みを零した。

「じゃあ、勘右衛門は?」
「俺?俺は一緒にいて楽しい子かな。いつも俺の話に耳を傾けて笑ってくれる子!それでやきもちの度が過ぎないといいなあ…」

尾浜は遠い目をして呟いた。そういえば、前の彼女は勘右衛門が誰とでも親しくすることに我慢できなくなってひと悶着あったもんな。男友達の俺らにも嫉妬して被害を被ったなあ…懐かしい…。勘右衛門もモテるんだけど何故か良い子と巡り会わないんだよな。竹谷は心の中で合掌をした。

「そういうはちはどうなの?」
「え、俺?理想だけならたくさんあるんだけどなー。とにかく可愛い感じの方がタイプだな!ザ・女の子!みたいな」
「あーはちほわほわ系大好きだもんね。前その見た目に騙されて痛い目みてたけど」
「うるせっ。てかあれは卑怯だよなー見た目チワワで中ドーベルマンて!女怖い…」
「女なんてそんなもんだよ…」

尾浜と竹谷は何かで悲しい絆で結ばれた気がした。空気を変えなくては。そう思い女関係には慎重な不破にバトンを渡した。

「…あ、じゃあ雷蔵は!?」
「え〜僕?ん〜…まあ、僕の悩み癖にも嫌な顔しない子だと嬉しいかな。あとお化粧がきつい子はちょっと無理かな」
「あーなるほどなーまあ、雷蔵がケバい奴と付き合ったら三郎が泣くな!ていうか全力で阻止しそうだな。…あれ」

そういえば三郎がやけに静かだ。あまりにも影が薄いので気付かなかった。

「なんだ三郎、珍しいな。お前この手の話大好きじゃん」
「あ?そーか?」
「まあ、いいや。それで三郎はどんな奴がいいんだ?」
「ああ、そうだな…」
「特定の人物を表すような回答は禁止としまーす。遠回しに告白をほのめかすような回答もめちろん禁止としまーす」
「勘右衛門…俺はまだ何も言ってねぇだろ…」
「言わなきゃ言いそうな気がしたからね。過剰でしたらすみませーん」
「お前…悪いと思ってねえだろ」
「ストップ。じゃれあい以上の喧嘩禁止」

鶴の一声とはまさにこのことだ。さすが雷蔵だなあ。雷蔵が制止すれば2人は口を噤むしかない。雷蔵が怒ったら恐いというのは俺ら5人の中で公然の事実だ。

「はちはさ、彼女が欲しいのか?」

凍りついた空気を気にもせず兵助は喋りだした。

「あ、ああ。兵助だって欲しいだろ?」
「俺は別にいらないな」
「まじで?」
「うん。はち達とこうやって過ごす時間が楽しいから。この時間が減るのは何だか寂しい」
「…そっか」
「うん」

そうだな。彼女ができたらそりゃいいだろうと思っていた。けど、今のこうやって気の合う奴らと笑いあえることってかなり幸せなことなんだ。単純なことなのにすっかり忘れていたようだ。

「ありがとな!兵助!そうだよな。お前らがいる俺ってすでに幸せもんだよな!」
「はちって単純だな。まあ、そこがはちのいい所だけど」
「それ誉めてんのかあ?」
「誉めてるよ。ぎりぎりな」
「お前なあ〜!」
そう言って兵助の頭をぐしゃぐしゃっとしていたら何だかもやもやしたものが吹っ切れていた。荒んでいたはずの心にも少しずつ熱がこもっていった。








「鉢屋、敵は本能寺にあり。だよ」
「分かってる。俺も今その言葉が走馬灯のように頭を駆け巡っていたところだ」
「あとさ、自分で言ってなんだけど"心が広くて面倒見がいい人"って」
「その先は言うな。聞きたくない」
「…天然な奴らって恐いね」
「…奇遇だな。俺もそう思っていたところだ」


そんな会話を尾浜と鉢屋がしていたとは、竹谷は知る由もなかった。




好みの話をしよう




0904
フリリク企画で「5年で好みの女の子のタイプの話」でした!ソガベさん素敵なリクエストありがとうございます〜!うまく形にできなくてすみません+遅くなってすみません…!
これからもよろしくお願いします。




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