いっぱち物語(仮)
1
桜咲く前の受験戦争真っ只中。オレは敵地で満身創痍だった。
まーぶっちゃけ受験日に熱だして、鼻汁垂れ流してたっつー訳だけども。
これともう一校受けてたけどインフルでまるっとダメになって、ここ逃したら後がねーと思って別室で試験中なう。
「一君、大丈夫か?あともう少しだからな」
「あ゙い。ずびび」
マスクでわからんかもだけど鼻水パネェw外したらぜってー洒落んなんない状況だぜこれw
脱線気味の思考で、試験監督の保健のセンセーの優しい檄を聞きながら、問題との一騎打ちに奮闘していたら扉が開いた。
「邪魔すんぜ」
「印南?どうした、試験中‥ってせめて制服着て来いよ。校舎内だぞ」
「うるせぇ。どうせ帰ったら直ぐ寝んだよ。面倒くせぇだろ」
印南と言われた先輩がスタスタとこっちに歩いてくる。なんだろね?先生にそんな口利いちゃっていーのかい?にしてもカッケー。スウェットにジャケット、ビーサンなのにイケメン以外の言葉が出てこない。お洒落イケメンなんて目じゃねー、マジもんのイケメンだわ。
と、イケメン先輩がオレに何か持たせる。
ほ?水筒のコップ?
「ふーん。まあ解けてんじゃねぇか。蜂蜜入り生姜湯、飲めよ。残り頑張んな」
「印南!試験中だぞ!!」
「っせーな!!帰るよ!!」
怒鳴りながら冷えピタをデコに貼っ付けてくれる。
「お前、帰り気をつけろよ」
「へ?」
「……さっき、転けてたろ」
「ほっ!!」
実はさっき、ここに来る途中でくしゃみした反動で思っきし転けた。
イケメン先輩に見られてたらしい。穴があったら入りたい。
下ネタを言う気力もない。
「フクッ――。やべっ、思い出したら、ッウケる――」
肩も口も震えてっし…もー思っきし笑ってくれたほーが気も休まるよ…ずずっ
「――ふっ、まぁ、頑張ってんじゃねぇの、受験生」
そー言って熱のある頭に負担かかんないよーにかな?ふわふわと頭を撫でてくれる。
先輩の体温の低さが肌に伝わる。
きもちー…
「じゃあな」
「…あー‥した」
熱のせいでお礼の言葉もままならない。先輩も出て行き、それから暫くして筆記試験も終わった。後日の面接では体調は全回復したんで、あんときの保健のセンセーにイケメ、印南先輩怒られちゃったか聞いたんだけど、注意はしたけどこれといったお咎めはなかったってー。マジかー。生姜湯美味かったなー。
一目惚れーとかんーな劇的なもんはこれっぽっちもなかったんだけど、切欠はそれかなー。入学して見かける度に目で追ってたら、目が離せなくなっちゃったってゆー。
やっぱ好きだなー、会長。
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