いっぱち物語(仮)
20
慰めるって…どーしろと?
「…イッパチ……」
縋るよーに指を握ってくる。
「なぁ…」
握った指を軽く揺すられる。
「……イッパチ…なぁって」
恋人繋ぎするみたいに、指を絡められる。
「………………八」
囁かれて、ギュッて握られて…
「キスして」
「待ったーーーーー!!!待ったタンマタンマタンマギブ!!まじギブ!!勘弁しろよ!!」
「ギブ……与えろと」
「じゃねーよ!ギブアップっつってんの!溜まってんだったら風俗行けよ!プロのオネーチャンに相手してもらえ!」
鳥肌たった。気持ち悪くてじゃない。今何か流されそーだった。恋しい人に接するみたいに甘く触れるクマさんに、心臓が震えた。空気も声も何もかもが甘ったるくて、それを作り出すクマさんが、それを向けられてる相手がオレって事が、どーにも居心地が悪い。
顔が熱い。
男相手に何照れてんだよオレ!バッカじゃねーの!
「…何だそりゃ……俺は、お前に、慰めろ、っつってんだがなぁ、あ?」
理解させるよーに、一言一言区切って凄んでくる。
クマさんが怒ってる。
こっわ。
「な何で命令…っちゅーか、慰めてほしーぐらい疲れてんだったら、尚更女のがいーんじゃん?やわっこいし癒されんだろ」
今のクマさんなら母性本能擽られまくりで、喜んで相手してくれるよ。車で行きゃ、街まで直ぐだろ。
「お前に、慰めろ、っつってんだ」
繰り返してくるし!
「や、でも、ねぇ?」
あーテンパる!わっけわかんねー!ほんとマジどーしたクマさん。何か様子が変だ。
「………だったら言い方変えてやろうか?」
言い方?
オレはマヌケだ。事が収束に向かって、初めて事態の重大さに気付く。まー、遅いか早いかの違いでしかないんだろーけど、それでも気持ちの準備は必要だと言いたい。
「『特別授業』二時間目、始めようか」
ニヤリと。それ、教師の笑いじゃねーよ。
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