いっぱち物語(仮)
18
委員は何も言わないし、クマさんも何も言わない。知ってたんだろね。オレも特に庇い立てするつもりもないし。でもさ、ジミーまた俯いて動かねーの。まーたキレんじゃね?こえーよ。普段おとなしーやつがキレると。実証済み。
とかゆー中、空気読んでんのかないのか、クラッシャーが現れた。
「仁十郎!!一平が退学ってどういう事だよ!!!」
扉壊れんじゃね?的な。ねーわ。蝶番ギッシギシ鳴っとるんだけど。バンッ!っちゅーか、バガンッ!って勢いで開いたもん。
「本宮、もう決定した事だ。今はホームルーム中の筈だ。後ろの奴らも教室に戻れ」
「文蔵!星輝って呼べって!大体何かの間違いだろ!取り消させろよ!」
「間違いじゃない。いいから教室戻れ。オメェ等も仕事する気は無んだろ。だったら授業に出ろ」
「何だよそれ!だったら八達にだって言えよ!!!」
「こいつ等はここに居る理由があんだよ。戻れ」
「理由?ああ、この下半身バカがとうとう問題を起こしましたか。随分な姿ですが、その平凡相手に強姦でもしようとして返り討ちにでも合いましたか」
オレ今、包帯グルッグルだかんね。湿布にガーゼに、やっぱ動く分に問題無くても色々スゲーから。色とかも。
ちゅーか凄い読みね、副会長。アッパレ過ぎだわ、アンタの脳みそ。
「何それ最悪ー」
「趣味悪ー」
「………変態」
「そうなのか!?最低だ!見損なったぞ八!!」
「ん〜…ぅはは、どーしよクマしゃん、オレお手上げー」
隣のクマさんにもたれる。ヤン造とフレッシュは汚い物見るよーな目で見てくる。うっぜ。流石に今ムリ。一辺にこいつ等相手すんの。
「なっ!!!さ、最低だ!最低だ!お前一平が好きなら文蔵から離れろよ!!」
だーら、もーちかれまちた〜。訳ワカメなおめーの言葉にも反論する気力ねーでちゅー。
「話しは終わりだ。イッパチ、お前は帰っていい。千熊先生、お願いしても?」
「ああ。イッパチ、負ぶされ」
「ういー」
もー今日は遠慮せんぞ。黙ってりゃ部屋帰れんだからチョー楽じゃん。クマタクシー様々ッスわ。
クマさん引き止めよーと、もじゃが喚いてやがるけどそこは鉄壁の風紀のお陰でっす。
扉横にもたれてた会長が目に入る。あいかーらずカッケーね会長。そのジャックナイフばりの鋭利な瞳で見つめられるだけで、ゾクゾクしてオレのエクスカリバーがおっきしそー。ちゅーか半勃ち?クマさんにゃ気付かれてんだろね。何考えてんだってゆー、まぁじオレ変態。クマさんはその理由もわかってそー。決して疲れマラではねッス。
でもイっちゃいそーな会長の瞳も、蔑みの色が見える分ちょっと悲しくなる。
「かいちょー、言っとくけど誤解よー」
これだけは言っとこ。
「ハッ、誤解な。にしても意外だな、そんなにそいつの具合はよかったか?」
あ、今クマさんがイラッとしたのがわかった。オレを抱える腕がギュッてなった。
「下半身が緩いとは思ってたけどよ、まさかケツの穴まで緩んでるとはな。気持ち悪ぃ。星輝に近付くんじゃねぇよ、ビッチが」
クマさんが何かゆー前に両手でクマさんの口を塞ぐ。
「いーよ、クマさん。いーから早く行こーぜー」
何だかんだクマさんはオレの事可愛がってくれてっから、オレを弁護しよーと会長に物申そーとすんのは百も承知よ。でも、そーすっとクマさんの教師としての立場が弱くなる。隙を作る。今の会長達なら、あの手この手でクマさん辞めさせそーで怖い。そんなのやーよ、オレ。クマさん好きだし。
「ほんじゃあ失礼しましたー。クマさんゴー」
今度はオレが、クマさんのほっぺたムニムニしながら言ってみる。たら、ため息吐かれた。あ、チクチクする。ヒゲ剃れよー。
扉を閉めてももじゃの声聞こえるって、チョーこえー。
「あいつ、将来『騒音おじさん』てゆわれんのかね?」
「…随分懐かしいネタだな」
騒がしいだけのおじさんを、副会長達はいつまで愛せんだろねー。見物だわな。いつまでも見てたくねーけどよ。
クマ印のタクシーは、揺れも少なくなかなか快適だった。靴も脱がしてくれたし。まー、ポイポイ放ってたけど。ベッドに下ろす時は怪我人だかんね、そりゃー優しく丁寧に下ろしてくださりましたわ。ナイスガイ!
「さーんきゅークマさん。ワリィけど、ついでにそこのスウェット取って」
流石に制服のまんまはやーよ。シワになる。
着替えの前に湿布変えんと、サムが怒んのよ。武道家だから怪我には人一倍敏感で、だから今週は大事をとってお休み。強制よ。ノートは任せたぜ。
「ん?何だべクマさん?」
着替えてたら、クマさんがオレをガン見てる。懐かしいな、おい。おまいさん、そんなにあっしをカエルにしたいのかね。
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