いっぱち物語(仮)
17
新歓の後、二日間オレは目を覚まさなかった。熱があったのと、寝不足とか、過労とかで。お見舞いにサムが来てくれて、新歓中オレがいなかった時の事を話してくれた。
オレを見付けてくれたのはクマさんだと。
あん時の事はふわふわしててよく覚えてねーんだけど、傍に居た人がクマさんぽいっつーのは覚えてる。
やーっぱクマさんっした。
クマさんは頭を撫でるっちゅーか、後頭部を撫でてくんの。クセっすか。そーッスか。
今日は風紀室で、遠足ん時の事を事情聴取だと。もー風紀ってか警察の領分だべ、それ。ちゅーこってオレの証言でジミーも呼ばれてる。もち3バカも。
「チョリーッス、オレです。遅れてすんまそん。あ、オレ緑茶煎れて」
「遠慮を知れ、お前は」
「あっは、なーにゆってんのインチョー。知ってるけどしよーとは思わねーの。解れしそんぐらい」
室内には既にどっかり自席に座るインチョーと、立たされたジミー、3バカが居た。応接スペースのソファーにはクマさんが座ってる。何人かの風紀委員もお仕事ちゅー。
「ちーッス、クマさん。あんがとねー。助けてくれたんしょ?」
「体調はもういいのか?」
「チョーいーッス。めっちゃ寝たからお肌すべすべよ。オレ。世界が嫉妬すんじゃねーかってw」
「へえ、ちょいこっち来てみ」
呼ばれてクマさんとこ行くと、両手でほっぺた挟まれる。摘まず挟んだまま、むにむにグイグイ、上に上げたり後ろに伸ばしたり、前に持って来て唇突き出すよーにされたり。
「クマ、ちゃ、ん、も、ふぃぃ?」
「クマさんもういい?」って言いたいのに、そのまま親指の腹でちょんちょん唇突くから、クマちゃんになったじゃんwちゅーかクマさん、オレの顔で遊ぶの好きね。
「本題に入っていいか?」
「あらやだよ、インチョーったら。いーに決まってんじゃん。どーんとやっちまって」
「理解した。山田、田中、中山の三人は三週間の停学、反省文30枚、課題30枚、一ヶ月の園内整備、便所掃除だ。サボれば超過、これは決定事項だ。不満があるなら自主退学を奨める」
「な―――!!」
3バカが抗議しよーと立ち上がるけど、そこは腐っても風紀委員長。威厳も貫禄もチョッパネェw普段抜っけ抜けに抜けてんのに。
「決定事項だ。理解しろ。お前等がした事は犯罪だ。学園の悪習と親の権力と金の力で首の皮一枚繋がっている事を忘れるな。こんな生温い処分で済んだんだ。退学になるよりは幾分もマシだろう」
どーやら3バカの家もそれなりなとこらしー。だったら退学とかなったら最悪、勘当だもんね。いや、それってまだマシかな?家の名前に泥塗ったとかで放り出されて、一気に底辺生活する方が精神的にクるよね。肉体労働でその日暮らしとかボンボンにゃムリっしょ。協調性なさそーだし。
話しは終わりとばかりに、インチョーが他の委員に目配せする。停学者は実家で謹慎するのが慣例だ。インチョーの事だから、実家の方にも連絡入れてんだろね、もー。
3バカを追い出した後、次にジミーに目を向ける。
「平山 一平。お前は退学だ」
あ、平山っちゅーんだ、ジミーって。
…………て、退学すか?
「平山は特待生枠で入学した一般家庭の出だ。何の後ろ盾も無い。加えて殺人未遂と言っていい、今回の傷害事件。手に余ると学園は判断した」
「殺人未遂、は、言いすぎじゃ…」
「お前は今この場に居るが、無事と言う訳ではない。この場に居るのは結果論だ。お前は突き落とされた。頭を打ったら?首の骨が折れたら?木の枝が突き刺さったら?退学程度で済んだんだ。学校を変えるだけで平山の将来に傷一つ付かない。決定は覆らない」
「や、別に退学が不満とかじゃなくてー」
殺人未遂て仰々しい響きがさー…
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