いっぱち物語(仮)
13
と、またボソボソ言ってる。だーから何でシャキッとせん!
「あんだってー?」
耳の裏に手の平持ってきて耳ダンボにする。
「…うるさい!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!あいつが来てから僕の生活めちゃくちゃだ!何もしてないのに目付けられて!友達は離れてくし周りは見て見ぬ振りで!反論も許されないで言われのない暴力受けて!やっと助けてくれる人が来たと思ったのに!なのに!」
「…何もしないからっしょ。役員が持ってる権力なんて学園内で行使すんのがせーぜーなんだからさー、親の権力なんて子供が簡単に使えるわけないっしょ?バカなわけ?考える事も放棄して悲劇のヒロインぶって、はなっから諦めてるやつを助けたいとは思わねーよ」
マジちょーメンドクセー。
その内風紀来るからいーやて思って、後ろ向いたのがいけなかった。油断したわ。
「ジミーも人が居るとこ戻った方がいいよ。今度は助けないからー」
気付いたら、沢山の茶色と、緑と、少しの青。
痛みより衝撃が強い。
上を見上げれば、去っていくジミーの後ろ姿。
「…………っ」
マジで?って呟いたはずが、肺に来た衝撃で上手く声にできなかった。
目の前には結構な高さの急斜面。
背中の衝撃。茶色と緑と青は、転がり落ちる時に見た地面と葉っぱと空の色。声が出ないのは斜面から伸びた木に体を打ち付けたから。
ジミーに突き落とされちった。マジかい。
「佐武、イッパチはどうした?」
「見回りッスけど、クマ先生とは一緒じゃないんスね。んじゃあ、風紀の誰かと一緒じゃないスかね。流石に一人になる馬鹿ではない筈ッスけど」
「イッパチなら制裁現場と思わしき場所に残して来たぞ」
杵沢達風紀委員は、本宮を保護し、本宮に制裁をしようとした加害者達を連行し、皆が居る広場へと戻って来ていた。と言ってもそれは表向きで、実際被害にあっていたのは加害者と思われる親衛隊員達だった。
最初は口頭での注意だった。だが聞く耳を持たない本宮に、次第に行為はエスカレートし、とうとう手が出てしまう。暴力行為に走った親衛隊のメンバーに非があるとは言え、本宮のそれは過剰防衛だった。
咄嗟に出た一発の平手打ちに対し、小柄な親衛隊の頬に握り締めた拳を減り込ませ、歯が咥内を傷付け、瞼を腫れ上がらせるまで殴打した。顔を中心にだ。奇しくも返り討ちにあった彼等は、園内のランキングでも上位に上る、可愛いと称される生徒達だった。
自分と同じ「愛される側の人間」。無意識だろう、その「愛される」に至った美貌を壊す事で、自らの矜持を勝ち取った。
その本宮は「親衛隊に制裁された」と言う言葉面だけ受け取ったイッパチ以外の生徒会役員、その他の取り巻きに、いつもの如くチヤホヤされ満足そうだ。
被害にあった隊員は、穏健派と言われる書記の親衛隊員だった。
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