いっぱち物語(仮)
9
周りを見回してみれば、談笑してるやつ、遊んでるやつ、まだカレー食ってるやつ、昼寝してるやつ、そんな中に何かやらかしはせんかと目を光らせる風紀。オレ以外の役員は以下略。
そん中に七三メガネの残念イケメン発見!
「ちょー、インチョー!見回りオレっちも混〜ぜて!」
「イッパチ、『委員長』と言ってみろ。そうしたら混ぜてやる」
「委員長」
「よし。行くぞ」
満足げに頷いて、今にもカツカツと靴音を鳴らしそーなこのインテリ眼鏡は風紀委員長、杵沢 仁十郎(きねざわ じんじゅうろう)。オレが知る中で、一番のアホだと思う。
「あんね、さっきサムが言ってたんスけど、親衛隊動くってー。あ、サムはうちの隊長ッス」
「把握した。不振人物は見逃すな」
「あいあーい。ちゅーか奥にしけこもーぜ、インチョー」
「『委員長』。悪いが俺の貞操は誰にも渡さん」
「悪いがオレの童貞も委員長には渡さん。インチョーのケツで筆おろしとかマジ嫌ッスわ。そーじゃなくてズボン、前後ろ反対だべ」
「む。失敬」
スラックスだったらファスナーもベルトもあるし、反対に履けば気付くだろーけど、ジャージはゴムだかんね、気付かないんだろね。……まあ、スラックスはスラックスでよく窓がオープンだけど。ホント残念だわ。
委員長がズボンを木の陰で直して、奥に進む。風紀はインカムで連絡とってるみてー。偶に委員長が話してる。もじゃに何かある確率高いだろーから、その事ゆったら、そーでもないって。その傍に居る地味男のがヤベーって。
もじゃは信者に護られてるから手を出せない。だから、いつもその傍に居るジミー君に八つ当たるんだと。もじゃを利用して、生徒会役員に近付いてるって言い掛かり付けて。信者ももじゃに近付くなって邪険にしてる。
なーる合点がいった。
確かにジミーに一番被害が集中すんだろねー。でもある意味自業自得っちゅーか……
実はよー…ジミーが振り回されてるのは早い段階で気付いてたし、助けよーとはしてたんスけどー……
編入して来たもじゃと同室になって、その日に親友認定されて、無理矢理一緒に授業サボらされたり、どこ行くにも手首掴まれて引きずり回されて、女子並に連れションもハンパねんだろね。
最初は気の毒で、困ってるしちょこちょこ助けてた。でも段々それが当たり前っちゅーか、助けられるの待ちするよーになったんだよなー。
もじゃがジミーに喚いたり、振り回したり、信者にいちゃもん付けられたりすっと、こっちチラッチラ見んの。いつもオレが助けられるわけでなし、ガンバレーって見てたら、「無視すんなよ!無視するなんて最低だ!」とか言われて、掴まれた手首、めっちゃ握られて痛そーにするし、逃がそーと気を逸らしてやって逃げ道作ったら、目敏く見つけたもじゃに手首握り直されて、そっからは諦めたよーな顔になって抵抗しねーし、でもやっぱチラッチラこっち見るし、バカらしくなった。
助かろーって気ねんだもんあいつ。
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