いっぱち物語(仮)
19
「文蔵!」
俯いてたもじゃ宮が喜色満面な声でクマさんに抱きつこーとした。変わり身はえーなおい。でもそこは流石クマさん。その長い腕で飛び付くもじゃの頭を掴んで阻む。リーチの差はどーにもなんねー。バカめ。
「お前も、『千熊先生』な」
「何でだよ!そんなのおかしい!俺と文蔵の仲じゃん!」
「教師と生徒のな。俺とお前は友達じゃない。目上の人間には敬語。立場を弁えろ」
「ッ!!だ、だったら、友達に――」
「なんねぇよ。弁えろ。敬語。今言ったばっかだぞ」
「で、でも!」
「イッパチ、運ぶ荷物はあれか?」
そー言って、オレの作業机を指差す。
「!う、うん」
掴んでた会長の拳ともじゃの頭をぺいっと放って、オレの手を引いてそこに向かう。手早く纏めてくれて、オレにちっちゃい方のダンボール、クマさんはおっきい方を持つ。戻んなくていいようにだろーねー。一気に運ぶみたい。いくつかの書類も箱に積めてくれてる。
「リコールが嫌な奴は仕事しろよ。あと本宮は誘われても生徒会室には入らないこと。規則だからな」
もじゃ宮はまだ騒いでたし、みんなこっちを睨み付けてたけど、そのまま生徒会室を出る。あらやだよ、クマさんったら足で扉閉めてる。足癖の悪いこって。
クマさんのおかげで全部、短時間で運べたわー。
「ありがとねークマさん。マジ助かりました。力の強い男ってステキねー」
「どう致しまして。惚れてもいいぜ」
「遠慮しますわw」
一段落ついたんで、職員室横の応接室でまったりなう。緑茶うめーwういろううめーw
「にしてもよー、もじゃ宮にあんな態度とってよかったん?仮にもセンセーっしょ?オレ的には、ざまぁwって感じだけどねー」
「仮にも…まあ、教師だからこそ、だ。言葉で通じねぇんじゃ態度で解らせるしかねぇからな。それで駄目ならお手上げだ。そこまでは付き合いきれん」
「あれま、そーお?クマさんなら、意外と一緒に夕日に向かって走りそーなイメージが」
「金八にでも見えるってか?」
「………『なんですか』ってやってーw」
「『なんですか』」
頭を下から上に動かして、髪を耳に掛けるような仕草で言うと、クマさんもしてくれた。
に、似てやがる…ごくり
「ふぅ…じいさんや、わしも敬語を使うた方がいいんかのぅ」
「…そうさのぅ、ばあさんはそのままでいいと、わしゃ思うがのぅ」
「その心は?」
「ぶっちゃけ贔屓」
「マジでかwww」
「頑張ってる子には寛大よ、俺。そんぐらいの贔屓してやるよ」
「いー歳こいて、ぶっちゃけてwww」
「あ、そこに食いつくんだ」
しょぼくれて見えんのは気のせーかしら?
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