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いっぱち物語(仮)

「スッゲー!!」

会室に入るなり叫んだ。

うるさい。

靴の上からでもわかるふかふかの絨毯とか、海外から買い付けた応接用のテーブルやソファとか、小振りのスワロフスキーのシャンデリアとか、室内は細部に渡って洗練されていた。

仮眠室の扉を見つけ副会長から説明されてると、すかさず会長が割って入って「何なら俺と一緒に寝てみるか?」とか、耳元で囁かれて顔を赤くしてる。

気持ち悪い。

鳥肌が立った。

普通どんなに顔が良くても男にあんな事されたら青ざめて、鳥肌が立って、吐きそうになると思う。間違っても赤くなるなんて事はない。

「だー!!やめろってば!俺にそんな趣味はないの!」

……「だー!」って…一々こいつはわざとらしい。と言うか白々しい。これだけ美形ばかりを侍らせといてどの口が「そんな趣味はない」だ。

わかってる。

こいつが僕がどんな目にあってるか知ってるのも、振り回して傍に置きたがる理由も。

自分の為だ。

『友達のいない』僕の友達になってやった優しい自分。取り巻きや親衛隊に暴力を奮われ、怪我をした僕を心配する優しい自分。その行為に、他人の為に憤慨する優しい自分。正義感が強く、全ての人間に平等に、分け隔てなく接する、自分がこの学園では異質だと売り込んで、興味を引く。本能か計算かわからないけど…見事に釣られた美形達、見目好いところが仇となったんだろう。加えて、日本を代表するような家柄だ。幼い頃から他人からはチヤホヤされ、大人にでさえペコペコされて、学園内でもそれは変わらず、そんな中で転入生のキャラクターはインパクトが強すぎた。

盲目になりすぎて、周りどころか自らの好きな人まで見えちゃいない。理想を押し嵌めようとするばかりで転入生の本質なんて見ようともしない。

馬鹿ばっかりだ。






会室内の説明を役員から一通りされると「ムダに金かけすぎじゃん!!」とか…

『ムダ』って……

「『ムダ』じゃねーから金かけてんの。ウッセーから出てってくんね」

開いた仮眠室の扉の中から声が聞こえた。

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