10 「せ、先輩?」 「…悪い…急に抱き締めたりなんかして…」 「いや…それは別にいいけど…」 なんでコイツが俺について回ってたのか、分かった気がした。 なんでコイツは俺としか絡みたがらないのか、分かった気がした。 コイツには心から信頼できる友達がいないんだ。 だから、中学ん時に助けてもらった事のある俺について回ってたんだ。 「…お前、また苛められてたりとかしてねぇよな?」 「え……うん…今のところは…」 「そうか…ならいい。 ……銀時、」 「な、何…?」 「…信頼できる友達を作れ。 もちろん俺以外で」 そう言うと、銀時は一瞬目を見開いて俯いてしまった。まぁ…急に言われても無理だろうな。 でも、それじゃあいつまで経ってもコイツは変われない。銀時のためにも…自分でちゃんとした友達を作らなきゃいけない。 「…一応…コイツなら信用できるかなって奴はいるんだけど…自分から話し掛けれなくて…」 「逃げたらダメだ。 それじゃ前には進めないだろ?」 「………」 俯いたまま黙り込んでしまった銀時をあやすように頭を撫でて、優しく声をかける。 「大丈夫だ。お前なら出来る」 「………うん」 キーンコーンカーンコーン…… 「…俺…頑張ってみます」 「あぁ、頑張れ」 これで上手くいけば…銀時は絶対に変われる。 1人でも友達が出来れば、不思議とどんどん増えていくもんだ。そうなりゃ苛められる心配もなくなるだろ。 頑張れよ…銀時……。 [*前][次#] |