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6


とある場所で、一人の男が慌ただしく足音を立てて廊下を走り勢いよく襖を明ける。その部屋には何人もの攘夷志士がたむろっている。その中には、その攘夷志士達を取りまとめているリーダー、桂も居た。

「た、大変だ桂さん!」

「…何事だ」

息を切らして慌てた様子の男とは対照的に、桂は至極落ち着いており、微動だにしない。まずはその男を落ち着かせようとするが、その場に座り込んでガタガタと震え出す男。

只ならぬ様子にざわつく周囲、よく見れば男の服には所々に血がついていた。

「しっかりしろ。一体何があった」

「い…生きてたんだ…あいつが…」

「あいつとは誰だ」

「き…金獅子が…坂田金時が、生きてたんですっ!」

「何だと…!」

部下からの言葉にさすがの桂も動揺していた。

死んだとされていた金獅子が、生きていた。
金獅子は戦いを好む男、つまり再び無差別で一方的な殺し合いという悪夢が起こりうるということである。
そしてまた一つ、桂の頭に嫌な予感がよぎる。
最近、白夜叉について嗅ぎ回る人物がいるということ。

金獅子が最後に戦ったのは、白夜叉。
そしてその勝敗は決まらずに幕を閉じていた。

つまり、このかぶき町に金獅子が現れた理由は、一つしかない。

「まずい…銀時が危険だ!早く知らせなくては…!」


桂は脇に置いていた刀を握りしめて、勢いよく部屋を飛び出した。
向かう先は言うまでもない、銀時のいる万事屋である。




―ところ変わって、万事屋。


「銀さん!!いい加減にしてください!!」

「あーもううっせェな!無理なもんは無理だっつってんだろ!!」

「だったら仕事の一つでも見つけてきてくださいよ!!!」


外にいても聞こえるくらいの二つの声。銀時と新八の声だ。どうやら何かもめているようだが、大きな怒鳴り声と共に、銀時がすぐに外へ出てきた。

「ったく…文句だけは一丁前に言いやがってよォ」

ぶつぶつと文句を垂れながらどこへ向かうでもなく歩き出す銀時。

鼻に小指を突っ込んで鼻をほじりながらだらしなく歩いている。ぼけっと歩いてる銀時だったが、路地裏へつながっている道の横で、ピタリと足が止まる。

何かの気配を、感じ取っていた。

銀時は迷うことなく路地裏へと足を進めていく。まるで吸い寄せられるかのように、一歩一歩ゆっくりと進んでいく。
進むにつれて、銀時の胸の中はざわついていた。

「なんだ…この感じ…」

自分の胸のざわつきを確かめるためにも、少しずつ足早になっていく。


薄暗く狭い道を進んでいくと、目の前には数人の浪人が倒れていた。もちろん周りには、血が飛び散っている。

「おい!大丈夫か!何があった!」

急いで駆け寄って声をかけるが、唸っているだけで何も話してはくれない。恐らくこの先に犯人がいるのだと判断した銀時は、気を引き締めて前へと進んでいった。

「あーあ、返り血浴びちゃったよ。せっかくの服も台無しなんだけど」

少し進むとすぐにその犯人と思われる人影が見えた。銀時は音を立てずにゆっくりと近づいていく。相手の背中が見え、間合いに入ったところで木刀を突き出した。

「テメェ、ここでなにやってる。通り魔かなんかか」

いつもとは違う、低い声のトーンで影に話しかける。見た感じ、相手は武器を持っていないようだった。しかし隙を見せればやられるかもしれないという可能性も考えて、気を抜くことはしなかった。

「はー…また新手?もういい加減にしてくんねぇかなァ…俺はただ人探ししてるだけだってのに」

大きなため息を吐いた影は、ゆっくりと振り返る。振り返り、顔が見えた瞬間、銀時は目を見開いた。

「なっ…お前…まさか…」

見覚えのある金髪、天パ、そして自分に似た顔立ち。
間違いない、銀時の目の前にいるのは坂田金時だった。動揺を隠せない銀時をよそに、敵意を出すわけでもなく自身の服をいまだに気にしている金時。
どうやら金時は、目の前にいる人物が自分が探している白夜叉だとは気づいていないようだった。

「お前…生きてたのか」

「んあ?生きてたって、俺アンタと会うの初めてじゃね?人違いだろ」

「は…?覚えて、ねぇのか?」

「んー見覚えねぇなァ、どっかでお会いしましたっけ?」


目の前にあの金獅子がいる、それだけでも驚きだが当の本人は銀時を覚えていないという。とりあえず銀時は木刀をしまい、自分を落ち着かせる。


あの時の二人が、金獅子と白夜叉が、今ここに変わった再会を果たした瞬間だった。




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あきゅろす。
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