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侍の国。彼らの国がそう呼ばれたのは昔の話。
今はその侍も、侍の魂を持った者も、少ない。
天人という異国の者により、この国も変わっていった。
かつての攘夷戦争で名を馳せた者達も、それぞれの道へと歩き出していった。
生存しているのか、それすらも分からない者達も居た。
かぶき町にある看板に、万事屋銀ちゃんというものがある。其処に居るのは、かつて白夜叉と言う異名を持っていた坂田銀時である。初めは一人であった万事屋も、今では志村新八と神楽が加わり毎日騒がしくなっている。
そんな日々を送っている銀時の元へ、とある来客がやってきた。
「銀時くんいますかー。あのー、銀時くーん、銀時くぅぅぅぅぅん!!」
「うるせぇぇぇぇ!!!!」
「ふごぉぉぉぉ!!?」
いきなり現れた来客は、かつての仲間である桂小太郎である。挨拶代わりにドロップキックをかます銀時と、それに対し何も反応せずに再び銀時の前へと立つ桂。
苛立った様子の銀時をよそに、真面目な顔で話を始める桂であるが…その言葉は彼の身の危険を知らせるものであった。
「…最近、このかぶき町で白夜叉について嗅ぎ回っている輩が居るらしい。素性はまだ知れんが、用心しておけよ銀時」
「はぁ?んなのただの噂好きな奴かなんかだろ」
「どちらにせよ、用心にこしたことはない。俺はその嗅ぎ回っている人物について調べてみるが…何やら嫌な予感がする」
いつになく真面目に話す桂だが、当の銀時は面倒臭そうに頭を掻きながら、分かった分かったと適当に返事をして戸を閉めた。銀時の態度に小さく溜め息を吐きながら、桂は万事屋をあとにする。
ところ変わって、ターミナル周辺。
白夜叉について嗅ぎ回る人物は、其処に居た。
「ねぇ、白夜叉って、聞いたことある?」
「うーん…聞いたことなーい」
「アタシもー」
「そっか、さんきゅ。ごめんね時間取らせちゃって」
赤いシャツのスーツ姿、胸元は大きくはだけさせわざと見せていて、耳にはピアス。そして、金髪。
誰がどう見てもホストにしか見えないその男、一際目立つその男。よりその男を目立たせているのは、見た目はホストの格好でありながら…腰には刀が差してあること。
…そして、稀に見る天然パーマである。
「はあ…さすがに今時の女の子に聞いても情報は得られないよなァ」
きょろきょろと辺りを見回して、片っ端から声をかけていく。しかし声をかけられるのは女ばかり。白夜叉について情報を探っていた男の周りには、いつの間にか数人の女達がついて回っている。
その男も、当初の情報収集という目的を忘れてしまったのか、女達と共に他愛ない話をしながら歩いている。
「いやーやっぱ女はいいねぇ、君たちみたいな可愛い子達は特に」
「もーやだ金時さんってば褒め上手なんだから〜」
「でも金時さんに言われるとすっごく嬉しい」
その男は周りの女達に”金時さん”と呼ばれていた。
そう、彼はあの坂田金時である。
死んだとされていたあの金獅子は、生きていたのだった。
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