Lover's end
6
「それから、私達もおばあちゃんおじいちゃんになっていったんだろうね」
「うん……そうだな」
言葉の意味は重い。
彩華姉さんは仮定を語るしかない。そして俺は事実を受け止めるだけ。
互いの心が見えるのなら、今どれだけ血を流しているだろうか?
「カズ君」
「何?」
「好きだったよ」
「俺も好きだよ」
風は強く吹いた。
交わらないのに、現実は終わりを告げない。
だから、まだ、二人の時間は続いていく。
「あっ」
彩華姉さんが不意に声を挙げた。彼女の視線の先、青空に飛行機雲が斜線を引いていく。
「ああ、眩しいね」
遠い空。
いつかは還らなくてはいけないのに、
彼女には遠かった。
彩華姉さんはそれでも眩しい微笑みを浮かべていた。
だから、俺は彼女に手を伸ばす。
あの夜の様に、願う。
彼女が幸せだったと言える様に。
俺達の、
彩華姉さんの、
いつか訪れる終わりは、
穏やかにあれる様にと。
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