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交錯タイトロープ
4-5
しかし。
「なっ……!?」
恭が目の当たりにしたのは明らかなる異変。彼の、そして理子の視線が注がれているサリアの髪の色が、
「金髪、だって!?」
「嘘…!?どうなってるの……」
目映い程の金色に変化していたのだ。
元々のサリアの髪色は栗色。茶髪よりもやや明るいのだが、これ程まで見事な金髪ではない。また、恭が見た夢の中の彼女は闇の様な黒髪だった。
予感とも違う状況に彼が戸惑う中、サリアの閉ざされていた瞼が開き、その唇が動いた。
「──また、目覚める事になるとはな」
「サリア…じゃない…!?」
その声はサリアの物とは違い、理性的で静かな響きを含んでいる──完全に聴いた事の無い、他者の声。
そして恭は、開かれた瞼の中の瞳が若葉色ではなく、蒼穹の如き青に染まっている事にも気付く。
「アンタ……一体、誰だ」
眼前に現れた、サリアであってサリアではない者の姿が起き上がるのを少年は目で追う。
確かに顔立ちなどは先程まで笑っていたサリアと変わらないのだが、金の髪と青の目、そして何よりも同じ人間の表情とは思えない程、『彼女』は落ち着いている。
その落ち着きに静寂が伴い、その場の者達は辺りの雨の音すら遠ざかった様な錯覚を感じた。

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あきゅろす。
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