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交錯タイトロープ
4-3
「アラアラ、これは派手にやられたものだねぇ」
「ヘッ……ザマァ無ぇな。いつもスカしてやがったからイイ気味だ──ヒャハハハハハハ!!」
拘束された青年は口元に孤円を浮かべ、さも楽しそうに笑声を上げる。並び立つ初老の男も気の毒そうに苦笑いを浮かべている。
「アルバート君、本調子じゃないのに頑張っちゃって。連絡じゃ君、まだ身体の修復が済んでなかったって聞いてたけどね」
男が倒れているアルバートに投げ掛けた言葉を耳にしながら、青年は長い髪に隠れた瞼で横目に恭達を見る。
「で、やったのはあのガキ共…か…──ァ?」
青年の視界に二刀を構える騎士が映る。しかし、その後ろに控えている人影に何か気になる物を感じた彼は降り頻る雨の中、焦点を合わせる。こちらを怯えた表情で強張っている少女や何かに焦っている少年ではない。その少年の膝元、目映い紫の光を放っている女の姿──。
彼女を捉らえた瞬間、青年の胸の内をゾワリと駆け抜ける物が感じられた。見た事がある女ではない。また恐怖などといった感情などでもない。
説明は難しいが、簡単に例えるならば“魂が震えた”としか言えない。
言い知れぬ感覚を彼は知っていた。それは──。

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