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交錯タイトロープ
3-18
辺り一面に流れる濡れる血の輪の中心に少年が倒れている。その前には先程まで教壇にて挨拶をしていた新しい女性教員がさっき見た時と変わらず静かに濡れながら、何故か拳銃を少年へと向けていた。
明らかに少女には理解出来ない状況。
ただ自分が分かる事は、何故か恭が死んでしまいそうな事だけ。
理子は恭の頭を抱え込む様にメイとの間に覆い被さった。震えが止まらない。
「……にげ、ろ…」
掠れた声で幼馴染みを逃がそうとするが、降る雨の音が強いのか、少女は動かない。そんな中、メイは少し考え、標的を恭から理子へと変えた。
「状況によるという可能性……自分の為に発現出来なくても、他人──しかも見知った知人なら、発現出来るかもしれないわね。実際、アルから聞いた状況からも『魔女』を守る為に突然目覚めたと言うし」

(『魔、女』!?──やっ…ぱり、あの…夢は、本当…の!?)

痛い。だが、血を流し続けている四肢からの痛みではなく、今、心臓の内側から弾けて破れて引き千切られそうな、激しく悲しい痛み。
あの悔しさ、悲しさは決して忘れられはしない、魂の芯まで刻まれた、痕。
だからこそ、今再びその痛みを繰り返す事など出来ない。




もう、あんな想いは沢山だから。

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