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交錯タイトロープ
3-13
渋谷の挑発にメイは眉を僅かに小さく引き上げ、またも変わらない口調で返した。
「貴方が何を思おうとそれは下衆の勘繰りでしかない。一度しか言わない、彼を私に渡して此の場から去りなさい」
静かなる命令口調に渋谷の血液が沸点に近付く。さっきまで流れていた鼻血も冷たい雨に冷やされたのか止まっているが、身体の方は今もエンジンが掛かっているバイクの様に熱が込っている。
「るせェな、オバさんよ…!テメエの所為だ、泣いても知らねェからなッ!!」
渋谷は軽い踏み込みから細かいジャブを放つが、女性は極力その攻撃を見抜き、時には腕で捌いて防御する。
体格的には男である渋谷の方が強い筈だが、メイはその攻撃を正面から受け止める事は無く、全くその表情も崩れる事は無い。
一方、渋谷の攻撃も単にがむしゃらに繰り出している訳では無い。先程彼女に倒された羽間と津島は見事なカウンターに沈められている。だからこそ渋谷は素早いパンチと一定ではない不規則なリズムで手数を重ねていく。腕を取られれば、投げや何らかのカウンターが放たれるからだ。

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