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交錯タイトロープ
3-10
まだ視界と身体が揺らぐ中、足元が縺れ、恭は今度は背中から倒れそうになる。何とか踏みとどまったが、明らかに生まれた大きな隙に渋谷は渾身の正拳突きを抉り込む!
「おらァァァァァ!!」
「ぐぅぅッ!?」
胸部に走る強烈な衝撃に皮肉にも今ごろ感覚が明確になっていく。それが更なる痛みを呼び起こし、恭は濡れた地面に今度こそ背中から倒れた。
「どうしたよ?いつもと違って動きが鈍いじゃねぇか?テメェその程度だったかァ!?」
雨と共に投げ付けられる渋谷の言葉。恭は再び立ち上がろうとするが、まだ走る痛みに思うように身体が動いてくれない。
「う、ぐ……」
無様に倒れている少年の有様に渋谷は先程までの熱気とは一転、覚めた表情を浮かべる。まるで期待していた物とは違っていた様につまらなそうな視線を恭に向けていた。
「マジでかよ…。テメエ何、本気出せてねぇんだよ。馬鹿にしてんのか?それともオレ一人程度には『近衛』の技は使う気も無ぇってか?ざけやがって…」
寝そべったままの視界を覆う様に渋谷が近付き、濡れながらも次第に勝ち誇った表情へと変わり、右足を軽く持ち上げた。
「…まァいい。テメェが調子悪かろうが、もう二度と生意気な口吐けねぇ様にしてやっからよッ!!」
そのまま倒れた恭目掛け、無造作に踏み付けようとしたその時!

「──何をしているのかしら、貴方達?」

雨音と共にそこに自然に居た様に、白衣の女性──つい先程まで全校集会にいた筈の燕明が少年達の喧騒を割って裂いた。

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